初の20勝の武器になる
巨人の投手チーフコーチ補佐に就任した
桑田真澄が、
菅野智之にカーブを教えているという記事があった。
菅野は多彩な変化球があり、カーブももちろん投げるが、単に目先を変える球であり、勝負球ではなかった。
桑田のカーブは違う。
それこそYouTubeで桑田の現役時代を見てもらえばいいが、彼のカーブは一度浮き上がるように見え、打者の目線が1回上がったところからタテに鋭く大きく落ちる。昔ならドロップと言った変化だ。
今の選手のカーブはどちらと言えば、緩く大きなスライダーだから、まったく別物と言っていい。
2年前までの菅野なら、たぶん投げられなかった。腰の回転がサイドの横回転だったからだ。これが別に悪いというわけではないが、桑田のようなカーブは投げられないし、スライダーもタテ変化より横変化のほうが鋭かった。
それが昨年、先に上半身を回すフォーム変えた菅野の腰の回転に、多少だがループを描くようなタテ回転が入り、リリースポイントが少し上になった。これにより、フォークの落ちがよくなり、スライダーがより打者寄りでタテ変化するようになった。
このフォームならドロップカーブもありだろう。
菅野クラスがいまさら新球? と思うかもしれないけど、いい投手はマンネリにならず、常に進化を求める。そして、その前向きな気持ちがすごく大切なことでもある。
実際、菅野が桑田のカーブを自分のものにできたらおそらく球数が減る。
カーブの利点の1つは、いわゆる緩急をつけることで打者を翻弄すること。菅野クラスなら120から110球くらいで完投できるかもしれない。
あとカーブの利点は試合中にフォームの修正ができることだ。かつて大投手の
金田正一さんが「試合で調子が悪いときはカーブを多投する」と言っていたことがある。
調子が悪いときは知らず知らずヒジが下がることが多い。カーブはヒジの位置が高くなるから、自然とその矯正ができた。
俺もその感覚はあったので、捕手の
達川光男さんから「きょうは、ようないの」と言われたら「じゃあ、どんどんカーブを投げましょう」と言っていた。
ただ、カーブというのは握りを覚えるだけじゃないから、そんなにすぐには投げられない。菅野でも半年はかかるんじゃないかな。
今年はちょうどオリンピックブレークがあるから実戦投入は後半戦からでいいだろう。打者の目先も変わって20勝への秘密兵器になるかもしれないよ。
写真=BBM