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2年連続最下位のオリックスが“優勝”を口にしても絵空事に終わらない理由

 

オープン戦でも好成績


開幕投手を務める山本。今季は勝利を荒稼ぎしそうだ


 撒いた種が芽を出しつつある2021年のオリックスは侮れない。3月11日現在、オープン戦は4勝2敗1分けで2位タイ。12球団トップのチーム防御率2.18を誇り、チーム打率.274も同3位と好成績を残している。

 投手陣では山本由伸(22)、山岡泰輔(25)の「若きダブルエース」に加え、左腕の田嶋大樹(24)、山崎福也(28)が並ぶ。開幕2戦目を任せられる見込みの高卒2年目の宮城大弥(19)も能力が高く、他球団に引けを取らない先発陣。さらに、ドラフト1位の山下舜平大(18)ら成長著しい若手投手も控えている。

 野手を見ても、セカンドの定位置を狙う高卒3年目の太田椋(20)と、ショートで奮闘する高卒2年目の紅林弘太郎(19)は楽しみな逸材だ。たとえるなら太田が坂本勇人巨人)、紅林が浅村栄斗楽天)。球界を代表する打者になる可能性を秘めている。この2人が殻を打ち破ればチームは一気に上昇気流に乗っていく。

 投打とも勢いある若手が頭角を現している背景には、ドラフト戦略がある。育成方針に舵を切ったのは2016年のこと。同年、最下位に終わったシーズン後、当時の福良淳一監督(現GM)は、こんなことを言っていた。「生え抜きの奮起が不可欠。T-岡田、安達了一には、もっとチームを引っ張っていってもらいたい」。

 チーム最後の優勝は1995、96年。福良氏も生え抜き選手としてリーグ連覇に貢献し、当時の強さを「若い選手が多く勢いもあった。チーム全体が活気にあふれていた」と“若手の勢い”の重要性を理解しての思いだった。

 すると、同年オフに糸井嘉男阪神へFA移籍するも、補強は外国人選手のみに。低迷→補強を繰り返してきた中で、方針は明らかに変わった。ドラフト前には西名弘明球団社長(当時)は、「地道にイチから育てていかないと層が厚くならない。ケガはつきもの。ケガ人が出たときに、どれだけ層が厚いかが勝負を分ける」と、生え抜き育成を明言していた。

 この16年のドラフト1位が山岡で、翌17年が田嶋。さらに18年は高卒野手の太田、19年が高卒左腕の宮城と、獲得してきた面々は、いずれも今季、主力としての期待が寄せられている。

力になるベテラン陣


中嶋聡監督のタクトもチームを上昇気流に乗せる


 ただ、若手だけでは勝てるほど甘くはない。そこで力になるのがベテラン陣だ。阪神を戦力外になった能見篤史(41)を投手兼任コーチで獲得し、メジャー挑戦していた平野佳寿(36)も4年ぶりに古巣復帰。経験豊富なリリーバーたちが、ブルペン陣を厚くしている。ブルペンで待機する若手投手陣からは「とにかく優しい。自分のことだけでなく周囲のことを気遣ってくれる」。すでにチームメートらと打ち解けている様子で、若手たちとの相乗効果が垣間見える。

 野手もしかり。主砲で新選手会長の吉田正尚(27)や来日2年目となるメジャー通算282発男のジョーンズ(35)がかみ合えば、恐怖の打線が組める。さらにT-岡田(33)、安達了一(33)もチームを鼓舞。若手、中堅、ベテランが機能し、チームには一体感が生まれているのもプラス材料だ。

 チームは2年連続最下位に低迷中だが、昨季のチーム打率はリーグ4位(.247)、チーム防御率は同3位(3.97)。決して、そこまで悪い数字ではない。若手の底上げがあれば、一気に好転する可能性は高い。

指揮官は「全員で戦わなければ、そんな簡単に勝てない」と慎重な姿勢だ。しかし、他球団がオリックスを甘く見ていれば痛い目に遭うだろう。

 生え抜き育成に舵を切ってから4年。その間はすべてBクラスも、育ててきた若手が主軸となりつつある今季が、実りの時期となっても不思議ではない。25年ぶりの優勝を口にしても、それが絵空事に終わらないはずだ。

写真=BBM
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