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背番号物語

【背番号物語】巨人「#27」巨人の面目躍如。戦前に誕生、V9時代に確立された球界の捕手ナンバー

 

初代からの捕手ナンバー


背番号「27」を着けた巨人V9の司令塔森


 捕手の炭谷銀仁朗西武からFAで加入した2019年から背負う巨人の「27」。炭谷は西武でも12年から「27」を着けていて、かつて黄金時代に司令塔として貢献した伊東勤の後継者だった。ヤクルトでも大矢明彦から古田敦也に受け継がれて、古田の引退で後継者を待っている状態の「27」。プロ野球に捕手ナンバーは少なくないが、その筆頭格といえるのが「27」だ。「18」がエースナンバーといわれるようになったのも巨人がルーツといわれるが、「27」に捕手のイメージを定着させたのも巨人といっていい。

 西武の黄金時代、その後半を率いたのは森祇晶監督だが、選手としては巨人の黄金時代、それも空前絶後のV9を支えた司令塔だった。当時の登録名は本名の森昌彦。その背番号こそ「27」だった。V9巨人を率いた川上哲治監督は、森をV9の「影のMVP」と評している。堅実なリードには定評があったが、日本シリーズなどでは大胆なリードも見せ、相手の打線だけでなく、1972年の阪急との日本シリーズでは、ペナントレースで106盗塁と走りまくった福本豊の足も、ほぼ完璧に封じている。勝てば投手が褒められ、負ければ捕手が責められる傾向もあるが、まさに司令塔としてチームを引っ張る捕手の存在は常勝チームに不可欠なのは間違いない。巨人のV9が最強の黄金時代だとしたら、この意味では「27」こそ最強の捕手ナンバーといっていい。

巨人の初代背番号「27」の吉原


 ただ、プロ野球のチームで最も長い歴史を誇る巨人で、「27」の捕手は森が最初ではない。背番号によってはプロ野球が始まる前から系譜がスタートする巨人だが、「27」の初登場は1938年。昭和13年のことだ。背負ったのは新人の吉原正喜だった。熊本工では投手だった川上とバッテリーを組み、ともに入団。のちの“打撃の神様”も、当時は貴重なだけの左腕といった程度の存在で、巨人が獲得したのも吉原の“ついで”だったという。このときの新人たちは“花の13年組”といわれた黄金世代だったが、真っ先にレギュラーをつかんだのは吉原だった。その豪傑ぶりを伝える逸話も多い。40年の夏には当時は日本の統治下にあった中国東北部で開催された満州リーグで最高守備賞を贈られ、数字ではなく“敢闘精神”から選ばれたといわれるが、この受賞を歴史として振り返ると、なんとも皮肉に見える。

2010年代に捕手の系譜が復活


 吉原は武骨ながらもウィット……機知に富んだ男で、球界からカタカナを追放することになった41年の開幕を控えた激励会で、「昨年までキャッチャーをやっていた吉原正喜です。今年から捕手をやらせてもらいます」と激励会でエスプリの効いた……いや、才気煥発な挨拶。場内は爆笑に包まれたが、すぐに水を打ったように静まり返ったという。そのオフの東西対抗戦でMVPに輝いたのを最後に応召した吉原は、44年に戦没。最後は捕手として鳴らした強肩で、手榴弾を誰よりも遠くまで投げていたという。

 吉原の応召で欠番となっていた「27」だが、戦後も欠番が続いていた。48年に投手、のち外野手の野草義輝が着けて復活。内野手の加地健三郎を経て、51年に継承した楠協郎(拡応)が継承する。吉原と同じ“花の13年組”で、「楠安夫」として入団したときは投手だったが、吉原のラストイヤーでもある41年から吉原と同じ捕手に。戦後は阪急(現在のオリックス)、西鉄(現在の西武)でプレーし、巨人へ復帰して吉原の背番号を受け継いだ。

 52年は一時、左腕の兼吉寛が着けたが、楠が大洋(現在のDeNA)へ移籍したことで後継者となったのがプロ1年目の森だった。森は20年間の現役生活で一貫して「27」を背負い、その引退で捕手の系譜が途切れる。二宮至の8年、近鉄から来た石渡茂の2年を経て、86年に継承した福王昭仁も引退の99年まで一貫して「27」を背負い続けた内野手だ。2000年代は河本育之中村隼人門倉健と移籍してきた投手がリレーしたが、10年代からは捕手ナンバーに戻り、市川友也が2年、實松一成が6年、宇佐見真吾が1年で炭谷へリレー。西武で球界の捕手ナンバーを着けていた炭谷が、巨人で捕手ナンバーの源流に合流した形だ。

【巨人】主な背番号27の選手
吉原正喜(1938〜41)
森昌彦(1955〜74)
二宮至(1976〜83)
福王昭仁(1986〜99)
炭谷銀仁朗(2019〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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