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【MLB】 アクションが詰まった野球はZ世代の心をつかめるのか

 

今季からMLBコミッショナーのコンサルトとなり、ベースボールの改革を行ってくエプスタイン氏。若い世代に受け入れられるベースボールを作り出すことができるか


 2月22日、フェルナンドタティス・ジュニアに14年4億4000万ドルの大型契約を与えたパドレスのピーター・サイドラーオーナーは会見で、「野球はパンデミックを乗り越えて、成長していく。素晴らしい未来が待っている」と語った。

 新型コロナ禍による減益を受けて多くの球団が財布のヒモを固くしまったのと対象的に、パドレスはオフの積極的な補強で世界一のドジャースと肩を並べる戦力となった。サイドラーはドジャースの黄金時代を築いた伝説的オーナー、ウォルター・オマリーの孫でもある。

「今コミッショナーオフィスはZ世代(1995年以降の生まれ)にいかに野球人気を浸透させるかでルール変更などを積極的に考えている。デジタル世代に受け入れられることでパイはさらに大きくなる。私はアメリカのパスタイム(国民的娯楽=野球)を信じている」と目を輝かせる。

 オーナーが期待するのは、カブスの編成本部長を退任し、MLB機構でコミッショナーのコンサルタントとなったセオ・エプスタインの指導力だ。エプスタインはマネーボール野球でレッドソックスとカブスの2つの名門球団を世界一にしたが、アナリティックを軸とした野球は結果的に、ホームランと三振と四球が増え、打球がフィールド内に落ちない、アクションとスピードに欠けるゲームに変わってしまった。

 2020年シーズンは全打席の36・1パーセント、1/3以上がそういった打席だった。「ゲームがおかしな方向に行ってしまった。その責任は効率的に試合に勝つことだけを考えてきた自分自身にもある。美的な要素、娯楽的な要素でネガティブに働いてしまった」とエプスタインは自戒する。

 今彼は、試合に勝つためではなく、試合を面白くするために働く。野球をかつてのようにスピード感があり、二塁打、三塁打、盗塁など、アクションが多いものに戻すルール変更を採用する。その手始めは低反発球の採用だ。ローリングス社の新しいメジャー球は約2・8グラム軽くなるが、反発係数も低くなり、114メートルを超える飛球は30センチから60センチも飛ばなくなりホームランが5パーセント減ると予測されている。

 ホームランが出にくいとなれば、チームは得点するためにスピードを生かしたプレーにより興味を持っていくはずだ。レンジャーズのクリス・ヤングGM(元79勝投手=プリンストン大出身)は、エプスタインの前に2年半、MLB機構でそのプロジェクトに取り組んできた。彼はズームによる会見でこう説明していた。

「ルール変更は複雑な問題が絡み合い、簡単ではない。しかしながら20年シーズンにコロナ対策で実施した新ルール(延長戦は無死二塁から始めるなど)を人々は楽しんでくれた。分かったのはルールを変えるのは良いことで、このゲームにはまだその余地があること。NFLやNBAはうまくやっている。フィールド上の商品をより魅力的なものにできる。MLBは今後数年かけてルールを変え、結果アクションが増えると思う」と言う。

「もっと面白く、アクションがぎっしり詰め込まれたゲームにする」とエプスタイン。果たしてZ世代のハートをつかむことはできるのだろうか。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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