3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、（平日だけ）1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

ONの不振で巨人負け越し

　今回は『1972年８月21日号』。定価は100円。

　前回に続く、８月４日からの阪神─巨人戦（甲子園）３連戦から。球宴前までは阪神が首位だったが、巨人が抜き、巨人１位、阪神２位で迎えていた。
　まず１戦目は阪神がサヨナラ勝ち。今回は2試合目である。
　８月５日、日中の気温は36.5度となった。とにかく暑い。
　
　それでも試合前、巨人・長嶋茂雄は言う。
「いやあ、きのうはいいケンカ試合だったね。いいね、このムード。夏なお暑いこの熱気。いいじゃないか。野球は暑い中でやったほうが気合が入るよ」
　さすが夏が似合う男だ。

　巨人の先発は堀内恒夫。８月は１日、６失点完投勝利の後、３日のダブルヘッダー第2試合に１回、４日はリリーフ登板でサヨナラ負け、3連投での先発だった。
　前夜、藤田元司コーチからは「どうする？　無理ならあしたに伸ばすぞ」と言われたが、
「いきますよ、もちろん。僕がいかなきゃ誰が行くんですか」
　と不敵な笑顔で答えた。

　結果は154球、10安打、３四球の１失点完投で３対１の勝利。これが17勝目だ。
「大切なのは気力だということが本当に分かりました」
　試合後の堀内。疲れ切った表情ながら充実感が伝わってきた。

　翌６日は阪神が江夏豊、山本和行のリレーで５対3の勝利。阪神が２勝１敗の勝ち越しだ。ONは3試合で長嶋が１安打、王貞治が３安打と当たりが止まっていた。
　川上哲治監督は言う。
「今はONが並みの打者になっている。これでは連勝できない。投手は掘内一人。つまりどん底状態ということです。それでもなんとかかっこうをつけているのは、わき役がやってくれているからです。それにどん底はウチだけじゃない。阪神、大洋もガタガタしとる。三つ巴の状態は当分続くわけです。それでなんとか上位についていってONが復調するのを待たにゃいかん。我慢ですわ。我慢比べですな。いまはそれしかありません」

　阪神は試合後、金田正泰ヘッドと戸沢球団社長の話し合い。金田コーチは３連戦の前、これを最後に指揮権を返上すると言っていた（詳しくは前回）。
　午後10時、両者そろっての会見。
「これからも現体制でいきます」と、まずは戸沢社長。
　金田ヘッドは、
「えらいわ。ほんまに根負けや。社長は、説得言うより、あかんあかんの一点張りや。ワシとしてはこの際、限界やいうたんです。しかし限界でもやってくれと言われるんやからしゃあない。続けるにあたっての条件？　そんなもん出しません。ワシは人生に条件はつけん主義や。やるからには誠心誠意やりますよ。やるしかないでしょう」

　また、あした。

＜次回に続く＞

写真＝BBM