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センバツ2021

「楽しみです」と胸を躍らすベテランスカウト 「通常」の形を取り戻しつつあるドラフト戦線/センバツ2021

 

球児の姿を目に焼き付ける


センバツ高校野球が3月19日に開幕。甲子園球場のネット裏席では、NPBスカウトが高校球児のプレーに目を光らせた


 プロを目指す高校生にとって、2020年は気の毒な1年だった。

 なぜならば、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、春と夏の甲子園大会が中止になったからである。

 例年であれば、甲子園のバックネット裏には全12球団のNPBスカウトが集結。多くのプロの目で、高校球児の「将来性」が見極められる。だが、昨年はそのステージが奪われた。

 センバツは、ひと冬越えた成長を確認する場。そして、春の公式戦、集大成の夏へと視察を重ねていくが、その過程を見届けることができなかった。昨年は緊急事態宣言が解除された6月以降に対外試合が再開されたが、やはり、実戦から離れた調整不足は否めない。夏には全国47都道府県高野連が主催した独自大会が開催。多くの3年生にとって最後の舞台となったが、甲子園につながらない「公式戦」では、例年同様の評価は難しかったという。

 8月にはセンバツ出場32校を招待した甲子園交流試合が行われた。センバツ大会が中止となった夢舞台の「救済措置」だ。野球部員、部員1人につき家族5人、野球部指導者の家族5人に加えて、スカウトは事前申請した1球団2人まで入場が認められた。応援もなく、ほぼ無観客に近かった。

 ある球団幹部によれば、いくら甲子園でも、1試合では、ジャッジを下すのが厳しかったという。スカウトからすれば、大観衆でのパフォーマンスも一つの評価基準で、勝ち上がっていくことで「本性」が見えることもある。

 過去の蓄積がある大学生、社会人と比べて、高校生の評価が最も難しいと言われている。俗に言う「伸びしろ」が最も期待できるカテゴリーだからである。しかも、視察期間は夏までと「賞味期限」が限られている。

 つまり、信頼できる「資料」が整わなければ、指名に踏み切ることはできない。練習視察でカバーすることもあったが、あくまでも「試合」でなければ、見えてこない部分もある。本来であれば、上位候補であった選手も、昨年は見送られたとの話も聞いたことがある。

 3月19日。2年ぶりのセンバツが開幕した。ドラフト候補が甲子園で躍動する球児の姿を、NPBスカウトは目に焼き付けている。あるベテランスカウトは「今大会は今年の高校生のトップクラスが集まっている。楽しみです」と胸を躍らせていた。秋のドラフト本番に向け多くの情報を収集し、各球団へ持ち帰る。コロナ禍でさまざまな制約はあるが、ドラフト戦線は「通常」の形を取り戻しつつある。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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