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【MLB】前田健太は断ったが…「10個のアウトが条件」ユニークなインセンティブ

 

今季からジャイアンツと契約したウッドはユニークな契約を結んだが、今後中継ぎ投手などはこういう契約が増えていく可能性が高い(写真はドジャース時代)


 メジャーにはユニークな契約が少なくないがジャイアンツが左腕アレックス・ウッドに与えた1年契約が興味深い。基本給は300万ドルだが、これに加えてインセンティブ(成績に応じて支払われる報奨金)が300万ドル付く。その条件が先発リリーフに関係なく、1試合に10個以上のアウトを取る(3回1/3)というもので、12試合積み重ねれば15万ドル、14試合目でさらに15万ドル、16試合目で25万ドル、18試合で25万ドルと増えて行き……26試合目から50万ドル、30試合に到達すれば満額300万ドルになる。

 編成本部長のファーハン・ザイディはウッドを先発で使うとしているが、シーズン中、特定の相手に勝つために1回か2回を投げるオープナーを先に先発させたくなるかもしれない。ウッドはその後を継ぐフォロワーとなる。「オープナーを使う方が良いと考えたとき、投手が嫌がったりしないように、リリーフに回ってもお金の面で報われるように考えた」と説明する。実はウッドが1年前、ドジャースと1年契約を結んだときも、このユニークな条項が入っていた。

 基本給は400万ドル、プラス投球回数によるインセンティブが250万ドル、プラス先発でもリリーフでも10アウト以上の試合を積み重ねれば最大350万ドルを稼げるという詳細だった。あいにくウッドがケガをしたために絵に描いた餅に終わったが、近年のメジャーの戦い方の進化を考えると、創造的な契約条項だと思う。

 個人的に思い出すのは1年前、ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長のインタビューをしたときだ。前田健太の(先発投手としての)インセンティブが多く含まれる特殊な契約について話していたのだが、彼は「今思えば、ブルペンで投げたときについてもボーナスがつくように配慮しておけばよかった。私たちは彼にボーナスを払うのが嫌で、先発からリリーフに配置転換したことは一度もない。チームが勝つためだった」と明言した。

 前田のドジャース在籍中、フリードマンはリリーフでもインセンティブがつくよう契約のやり直しを持ちかけたが、200勝を究極の目標とし先発へのこだわりが強い前田は断った。「ケンタが、お金がすべてではないのは分かっていた。でも少なくとも彼がリリーフに回ることでも報いられる形にしておければ」と悔やんでいたのである。

 聡明なフリードマンやザイディ(元ドジャースGM)は試合に勝つことを最優先し、新しい戦い方を創造してきた。先発投手に打順の3巡目には投げさせず、早めにブルペンに交代させたのもそう。当然、先発投手は不満だが、その方が試合に勝てるなら、首脳陣はそうしたいもの。あとは選手が自分は犠牲になっている、お金で損をしていると被害者意識を持たないようインセンティブを工夫すればいい。

 10アウト、3回1/3というのは珍しい条件だが、分業制が進む中、今後こういう使われ方は増えていく気がする。ドジャース、パドレスがしのぎを削るナ・リーグ西地区で、ジャイアンツは厳しい立場だが、ウッドがどんな投球を見せるか興味深く見ていきたい。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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