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センバツ2021

130球の完封劇。市和歌山・小園健太が「大会No.1」と評価される理由が分かった!/センバツ2021

 

捕手のサインに応えた投球術


市和歌山のプロ注目右腕・小園健太は県岐阜商との1回戦を、8奪三振で4安打完封勝利(1対0)。6四球と苦しみながらも、得点を与えなかった


 なぜ、市和歌山・小園健太(3年)が「大会No.1投手」と評価されるのか、その理由が分かった。

 県岐阜商との1回戦。5回終了時のグラウンド整備中。市和歌山の主将で正捕手・松川虎生(3年)はエース右腕・小園の下へ近寄り、笑顔で右肩をさすっていた。インタバル中に見せた、きめ細やかな心遣い、である。マスクをかぶれば、大きなジェスチャーで背番号1を鼓舞。中学時代に在籍した貝塚ヤング時代からバッテリーを組んできた相性の良さを、甲子園でも存分に見せた。

 市和歌山は0対0の9回裏一死一、二塁から亀井新生(3年)の中前へのサヨナラ打で初戦突破を決めている。

 先発の小園は8奪三振で完封したが、試合後は「初めての甲子園で舞い上がってしまった」と振り返った。

 数字は正直だ。昨秋の公式戦は68回1/3で13四死球だったが、この試合は6四球と苦しんだ。県岐阜商打線は追い込まれてからはノーステップ打法を徹底し、食らいついてくる。また、県岐阜商・鍛治舍巧監督は打者のタイミングが合わないと判断するや、2度にわたり、打席途中で代打を告げた。大会屈指の好投手を攻略するために、あの手この手を使ってきたが、小園は動じなかった。

 6回を除いて、走者を背負うピンチの連続だったが、得点を与えなかったのは、松川の好リードに尽きる。そして、捕手のサインに応えた小園の投球術も光った。

「真っすぐに張ってくる中で、スライダーをうまく使えた」

 ベース幅を広く活用。象徴的な2つの場面があった。

 3回表一死二、三塁。二番・宇佐美佑典(3年)は、追い込まれてから落ちる系のチェンジアップなど3球ファウル。最後は横滑りするスライダーで空振り三振を奪った。続く左打者・山本晃楓(3年)にはファウル、ストライクで追い込むと3球勝負で、146キロのストレートを外角へズバッと決めた。

 8回表は先頭に安打を許して、次打者をバント併殺も、連続四球で二死一、二塁。1ストライクから伊藤颯希(2年)に代えて、代打・行方丈(3年)が入る。二塁けん制悪送球で一、三塁とするが、ここでも慌てることなく、スライダーで空振り三振を奪っている。

「勝てる投手」を証明


 市和歌山・半田真一監督は、小園の投球内容について「要所でしっかりしたボールが投げられた。0点に抑えてくれたので、100点満点です」と称えた。

 この日の最速は147キロ。最速152キロの「剛腕」として脚光を浴びている小園だが、自身初の甲子園のマウンドでは「巧さ」を見せた。つまり、ここ一番での場面では、トップギアに上げることができるのだ。

 2019年夏に準優勝を遂げた星稜高・奥川恭伸(現ヤクルト)の投球スタイルをかぶらせるNPBスカウトもいるが、小園も「勝てる投手」を証明したと言える。つまり、どんなコンディションでも、しっかりとまとめてくる対応力と修正能力。この日の4安打シャットアウトは、内容の濃い130球だった。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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