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センバツ2021

センバツ制覇まであと3勝。東海大相模にとって大きいベンチに控える左腕・石田隼都の存在/センバツ2021

 

5回から無失点救援


東海大相模のエース・石田隼都は鳥取城北との2回戦で5回からリリーフして無失点。1回戦(対東海大甲府)に続く好救援だった


 東海大相模の左腕・石田隼都(3年)は、甲子園の3つの風景を知っている。

 1年夏、中京学院大中京(岐阜)との3回戦で先発して5回1失点の力投(チームは4対9で敗退)。観衆は4万人だった。

 2年夏、大阪桐蔭との甲子園交流試合では7回2失点と気迫の投球(チームは2対4で敗退)。観衆はほぼ無観客(控え部員、父兄、学校関係者ほか)だった。

 そして迎えた今春。東海大甲府との1回戦では1対1の9回から救援して3回無失点。打者10人から7奪三振と圧倒し、自己最速を4キロ更新する146キロを計測した(ヤクルトのスピードガンでは150キロ)。この試合の観衆は8500人。今センバツの観客の上限は1万人。アルプス席は上限1000人で、事前に録音した音源を場内のスピーカーで流すブラバン応援が戻った。

 スタンドの状況が異なる3つの甲子園を経験している石田だが「あまり変わった感じはしなかった。マウンドも変わっていなかったので」とサラリと語った。強心臓の持ち主だ。

 鳥取城北との2回戦もブルペン待機だった。東海大相模は1回戦では公式戦初先発の石川永稀(3年)が8回1失点。そして、この2回戦も昨秋の公式戦で登板機会のなかった求航太郎(2年)が4回無失点と試合をつくる。

 石田は初回から準備を進めており、心身とも充実した中で5回から救援している。わずか1点リード(1対0)とスリリングな展開だ。

「最初から腕を振っていけたのは良かったです。リリーフは難しい部分もありますが、頼ってもらえるのがうれしい。そこで抑えるのが、エースの役割だと思っています」

 8回は二死一、二塁のピンチで見逃し三振。9回も一死三塁という難しい場面ではあったが、後続2人を空振り三振に斬っている。最後は高めのボール球を振らせた。26個目、27個目のアウトを気合のピッチングで、相手打者を上回ったのだ。

「(三振を)狙ってはいないですが、最終的に三振を取れたのは良かったです」

「26個目、27個目のアウトを取る」をテーマに


 昨秋の関東大会準々決勝(対東海大甲府)。先発の石田は1対0の9回裏一死一、二塁から三塁打を打たれ、サヨナラ負け(1対2)を喫した。この敗戦を教訓に「26個目、27個目のアウトを取る」ことをテーマに、冬場は下半身強化に努めてきた。その成果を、甲子園で出したのである。

「ゲーム中に考えることはなかったですが、同じ場面で勝ち切れたのは、チームにとってもプラスになる」

 3年ぶりの8強進出。石田は2015年夏に全国制覇を遂げた小笠原慎之介(現中日)にあこがれ、栃木から神奈川の名門・東海大相模の門をたたいた。好きなプロ野球選手は阪神遠藤成。常に努力してきた同校で2学年先輩の姿を目に焼き付け、自身も日々の積み重ねを大事にしている。

 東海大相模・門馬敬治監督は、石田について「本人としても、まだまだ反省点も多いと思います。次のチャンスをいただいたので、心も体も技術も、もう一段階上がってほしい」と期待を込めている。

 門馬監督によれば、先発の構想として、昨秋に公式戦登板機会のなかった左腕・武井京太郎(2年)も控えているという。先発投手が初回から全力で行けるのも、石田がベンチで待機しているからだ。10年ぶりのセンバツ制覇まであと3勝。左腕エースは投球におけるポリシーと語る「腕を振ることを意識」を徹底する。

文=岡本朋祐 写真=牛島寿人
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