初のベスト8進出はならず
広島新庄・花田侑樹は智弁学園との2回戦で先発も、3回3失点で降板。チームも敗退(2対5)したが、1回戦での好投を含め、自身初の甲子園では良さを存分に見せた
広島新庄は智弁学園(奈良)との2回戦で敗退(2対5)。出場32校中、練習試合を通じて唯一、無敗で勝ち上がってきたが、連勝は「46」で止まった。
エースで四番。今大会、この重責を背負ったのは3人いた。具志川商・新川
俊介(3年)、京都国際・
森下瑠大(2年)、そして広島新庄・花田侑樹(3年)である。
花田は「全然、プレッシャーはありません。やっていて楽しいです」と充実感を語る。
144キロ右腕・花田は上田西(長野)との1回戦、先発して8回途中無失点に抑えると、左腕・秋山恭平(3年)へ継投。0対0の12回裏、花田のサヨナラ打(1対0)で初戦を突破した。広島新庄は鍛え上げられた堅守でリズムをつくり、打線は少ない好機を生かす。花田から秋山へつなぐのが必勝パターンだ。
昨秋の新チーム結成以来、練習試合を含めて46勝無敗。宇多村聡監督は「いかに投手を中心に失点を抑えていくか」とチームの特長を語る。花田も「ゼロで、ピンチになっても何とか抑えて、勝利に導いていけるように丁寧にいきたい」と語っていたが、智弁学園との2回戦では、プランどおりには進まなかった。
広島新庄は2回表、四番・花田の左前打を口火に、二死二塁から
平田龍輝(3年)の左前適時打で先制。しかし、花田は3回裏に長短4安打を集中され、3失点で逆転を許す。花田はこの回で降板し、チームは2対5で敗退し初のベスト8進出はならなかった。
相手は昨秋の近畿大会の覇者。1回戦では大阪桐蔭を8対6で下した打線の破壊力と、対応力は評判どおりだった。花田はストレートを軸としながら、カットボールを織り交ぜ、打者のタイミングを外すのが持ち味である。「真っすぐに近い軌道で、腕の振りは真っすぐ以上に振る」。しかし、智弁学園打線は一枚上だった。2巡目以降、追い込まれてからも、変化球についていく粘りがあり、際どい低めのストレートも見極める能力があった。そして、最後は甘く入った真っすぐを痛打されている。
「二刀流」を貫いて5年ぶり夏の甲子園へ
惜敗したとはいえ、今大会、花田にとって飛躍のステージとなった。ワインドアップから、ゆっくり左足を上げ、しなやかな腕の振りは
ソフトバンク・
東浜巨にそっくりだ。1回戦を視察したNPBスカウトも好評価。
「ウチにいる野村(祐輔)のように、コースに投げ分けられる。腕のしなりが良く、好投手らしいスピンしたボールを投げ込む。変化球の精度が高まれば、楽しみです」(広島・
苑田聡彦スカウト統括部長)
「球の質が良い。球速表示は出ていないかもしれませんが、真っすぐで空振りが取れる。ピッチングをよく知っていますね」(
ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスク)
宇多村監督は花田の「四番・投手」の起用について「投手から見れば、楽な打順という選択肢もありますが、ほかの選手を起用するよりも、花田が適任です」と語る。花田は冬場に「投手で勝負したいです」とあらためて、指揮官に直訴したという。センバツを終え、次なる目標は同校5年ぶりとなる夏の甲子園。花田は「二刀流」を貫いていく構えだ。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎