「チームに勢いが出たと思います」
東海大菅生の左腕・本田峻也は京都国際との2回戦で9回表から救援登板。甲子園初マウンドで1イニングを抑え、笑顔でベンチに戻る。2点を追う9回裏のサヨナラ勝ち(5対4)につなげた
劇的な幕切れである。
東海大菅生は京都国際との2回戦、2対4のビハインドで迎えた9回裏、1点を返すと、二死満塁から代打・多井耶雲(2年)の右二塁打でサヨナラ勝ち。センバツは初の8強(夏の選手権は2017年に4強)を決めた。
この劣勢の展開をはね返した要因は何か。
9回表、3番手として救援した左腕・本田峻也(3年)の力投に尽きるだろう。
先頭打者に四球を与え、犠打で一死二塁。追加点は許されない場面で、後続を遊ゴロ、三ゴロに仕留めている。一塁ベンチへ戻った本田はすぐさま振り返り、野手一人ひとりとハイタッチで迎えた。このエースとしての立ち居振る舞い。ようやくチームに貢献できた安堵の笑顔が、勇気を与えた。東海大菅生・
若林弘泰監督は試合後にこう明かしている。
「本田が最後、行ける! ということで、チームに勢いが出たと思います」
143キロ左腕・本田は3月6日の対外試合解禁以降、好調をキープしていたが、聖カタリナ(愛媛)との1回戦は左肩の不調により登板回避。2年生右腕・
鈴木泰成ら3投手のリレーでセンバツ初勝利を飾った。2回戦もベンチスタートだったが、終盤に巡ってきた甲子園初登板で気迫の23球を投じて、チームに勝利を呼び寄せたのだ。
この日の最速は140キロ。プレートの一塁側を踏み、対左打者はボールが遠く見え、対右打者のクロスファイアが効果的である。100キロ台のスローカーブに、スライダー、チェンジアップをコーナーに集める。
東海大菅生出身のサウスポーと言えば、同校から八戸学院大を経て19年ドラフト1位で
巨人に入団した
高橋優貴が思い浮かぶ。
元
中日投手の若林監督は、昨秋の東京都大会で優勝した際に「本田のほうが上。ここ一番で勝てる投手です」と語っていた。エースの復帰は、チームにとって、これ以上の好材料はない。
準々決勝はこの日の2回戦から連戦となる。アンケート欄に将来の夢を「日本を代表する投手」と書いた、本田の投球が見逃せない。
文=岡本朋祐 写真=高原由佳