週刊ベースボールONLINE

センバツ2021

雨天順延は両校にとってプラス。好ゲームが期待できる準々決勝1試合「天理対仙台育英」/センバツ2021

 

ベストコンディションで対決


3月28日に予定されていた準々決勝4試合は中止。大会要項により、準決勝まで2日以上日程が延長されたため、準決勝翌日の休養日がなくなった。29日が準々決勝、30日が休養日、31日が準決勝、4月1日が決勝となる


 日曜日は雨が降る――。2日ほど前から天気予報は悪かった。とはいえ、現場指揮官はどんなことがあろうと、最善の準備を進めなければならない。しかし、天理・中村良二監督は心の中で願っていた。決して、生徒の前では見せることはできない胸の内を……。

「私自身は大人なので、いくらでも(気持ちの)切り替えはできる。できることならば1日、順延になってくれたらな、と。正直、あったので、今日はそのとおりになったので、うまくいったと思います」

 仙台育英との準々決勝。先発投手は193センチ右腕・達孝太を予定していたという。達は宮崎商との1回戦を161球で1失点完投。中4日の健大高崎(群馬)との2回戦では134球で完封している。前回登板から中2日よりも、中3日のほうが、良いコンディションに持ってこられるのは明らかである。だからこそ「こちらとしては、恵みの雨かなと思います」と、指揮官はマスク越しに笑顔を見せた。

 対する仙台育英・須江航監督も順延を大歓迎した。この日は、甲子園球場内の室内練習場で2時間の調整。今大会の最終登録でベンチ入りメンバー18人から漏れた186センチ右腕・中村和寛(3年)を「仮想・達」と見立て、通常よりも2メートル前での打撃練習を行った。また、右腕・渡邉達也(3年)も打撃投手を務め、須江監督は「『達』対策をしました(苦笑)」とユーモラスに語った。

 達とは中3日よりも、疲労が残る中2日で対戦したいところではあったと思われたが、須江監督の考えは、まったくの別次元だった。

「達君はしっかり体を休めて、一つ状態が良い形で、対戦できる。私たちにとってありがたいこと。まだ、優勝するだけの力はない。状態の良い達君を攻略して『勝ち上がったぞ!』と自信をつけていきたいです」

 まさしく「逆転の発想」だ。

 春夏を通じて東北勢の悲願である甲子園初優勝まで、あと3勝だ。東日本大震災から10年。開会式の選手宣誓では島貫丞主将(3年)が「これからの10年、私たちが新しい希望の力になれるように、歩み続けます」と全国へメッセージを発信したのは印象的だった。

 島貫主将は準々決勝を前に「目の前の試合を勝つことしか頭にはない。勝ち上がることで、日本一も見えてくる」と、一戦必勝を誓っている。そして最後に「強くなって、次の試合に勝ち進んでいきたい」と、須江監督が掲げる意図を、しっかり理解している様子だった。

 1日の雨天順延は、両校にとってプラスしかない。3月29日の準々決勝第1試合。ベストに近いコンディションで激突する、スリリングな好ゲームが期待できそうだ。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング