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センバツ2021

主将不在のピンチでも快勝。「すべてがレギュラー」東海大相模の強さの秘密とは?/センバツ2021

 

17人が力を結集して


東海大相模の一番・左翼手の門馬功(3年)は門馬敬治監督の次男。この日は主将代行として、2回に左翼席へ2ランを放っている


 主将不在のまま、甲子園を去るわけにはいかない。東海大相模は17人で福岡大大濠との準々決勝に立ち向かい、8対0で快勝した。

 試合前、大会本部から広報連絡が入った。

「東海大相模の大塚瑠晏選手(3年)は、急性胃腸炎のため、準々決勝の福岡大大濠戦でベンチ入りしません。門馬功選手(3年、門馬敬治監督の次男)が主将代行を務めます」

 大塚は主将・遊撃手。二番打者として、シュアな打撃が持ち味である、攻守におけるタテジマの「顔」である。昨年8月の甲子園交流試合(対大阪桐蔭)も出場し、経験豊富。同校のモットーである「アグレッシブ・ベースボール」を体現するチームリーダーである。4強進出をかけた一戦、精神的支柱を欠いたものの、チームが揺らぐことはなかった。

 東海大相模は常に試合の「入り」を意識する。初回、長短4安打で2点を先制すると、2回表には主将代行の一番・門馬の左越え2ランなど計4得点。序盤で主導権を握る得意の形で、先発・石田隼都(3年)はリズム良く、3安打完封した。1、2回戦では計4得点と打線が低調であったが、この日は14安打。チームスローガンである「つながる」を実践できた。大塚の代わりに八番・遊撃手で出場した2年生・深谷謙志郎は右二塁打を放ち、守りでも貢献。選手層の厚さを見せている。

 試合後、門馬監督は「控え選手はいない。すべてがレギュラー。すべてが戦力。踏ん張ってくれた」と淡々と語った。振り返れば、雨天中止となった前日の取材で、大塚について言及している。大塚は2試合で6打数1安打と、本来の実力を出し切れていなかった。

「キャプテンで『自分が! 自分が!』の思いが強い。試合になればキャプテンではない。一選手ですから、持ち味である足、つなぐ野球を見せてくれたらいい。あまり、考え過ぎなくていい、と」

 主将が戦線離脱した中、17人が力を結集。全員が与えられた役割に徹した。

「初戦から言い続けてきたことが、3戦目にして一つの成果が出た。高校生ですので、本物の実力はない。今日の結果に一喜一憂するのではなく、しつこくやり続けた結果です」(門馬監督)

 前日の練習後、取材に応じた主将・大塚はこう言っていた。

「今日も1日、成長する!!」

 室内練習場という限られたスペースの中でも、目の前のメニューに真摯に向き合う。その積み重ねが、力になると信じている。チーム全体に共有されているからこそ、大舞台の緊急事態でも慌てることはないのだ。

 3年ぶりの4強進出。1回戦では昨秋の関東大会準々決勝で惜敗した東海大甲府に勝利し、鳥取城北との2回戦では1対0の接戦を制した。甲子園で戦うたびに、強くなっている印象だ。だが、慢心はない。振り返るのは全日程終了後。東海大相模は一つひとつの課題を克服し、チーム全体として日々、少しでもレベルアップすることだけを考えている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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