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【MLB】エースのスネルをトレードも、今季もレイズがあなどれない理由

 

レイズ流のさまざまなポジションを守り、相手状況に合わせてプレーするスタイルに慣れてきた筒香。今年もアッと言わせるような奇策をレイズは仕掛けてくるかもしれない




 レイズの筒香嘉智が一塁手で2度目の先発をした3月10日のツインズ戦は見どころが多かった。先発投手は背番号61のルイス・パティーニョ。レイズはパドレスにエース左腕のブレイク・スネルをトレードしてしまったが、交換相手の目玉がこの投手だった。

 まだ21歳と若く、真っすぐは最速で100マイル、平均でも96、97マイルが出る。スライダーもスピンが効いて鋭く曲がる。この日、三振は奪えなかったが1回を三者凡退で抑えた。このトレードで、さすがレイズだと思うのは、スネルが素晴らしい投手なのは間違いないが、昨季は新型コロナのため79回2/3しか投げていないため、21年はケガの懸念から150イニング以上は期待できない。

 ダルビッシュ有(パドレス)などほかの投手もそうだ。つまり通常なら良いローテーション投手が5人いて、750イニングしっかり投げてくれれば優勝の確率は高くなるが、今季はそうではない。そう分かった上で的確に補強した。10人は必要だから、質より量と、スネルとともに軸だったチャーリー・モートンも引き止めなかった。

 今季は昨季も投げていたタイラー・グラスノー、ライアン・ヤーブローの2人に始まり、若手のパティーニョ、ジョシュ・フレミング、ジョー・ライアン、シェーン・マクラナハン、ブレンダン・マッケイといった逸材を育てながら使う。プラス値段の安いベテラン投手をかき集めた。40 歳左腕リッチ・ヒル、ここ数年はケガに泣かされているマイケル・ワカ、胸郭出口症候群で20年は投げなかったクリス・アーチャー、新型コロナで20年はオプトアウトしていたコリン・マクヒュー。

 10人以上の先発投手の分業で質の高い750イニングを目指す。この日は、伸びのある真っすぐとチェンジアップを武器に三振が取れるライアンも1回2奪三振と好投。昨年プレーオフでメジャー・デビューした左腕マクラナハンも前日1回3奪三振の好投。低い腕の位置から100マイルの豪速球とスライダーを投げる。

 二刀流で知られるマッケイは昨季、コロナ感染と肩の手術で活躍できなかったが、今季は出てくる。みんなメジャーでの実績が少ないため未知数ではあるが質より量なのである。野手に関しても同じ考え方で、特定のスターに頼らずみんなで結果を出す。この日は筒香の一塁だけでなく、昨季は一塁、二塁、三塁、外野を守ったマイク・ブロッソーが遊撃に挑戦。昨季は二塁プラス、外野のすべてのポジションを守ったブランダン・ローが三塁でプレーした。

 このコラムでも何度も書いたが、いろんなポジションが守れる野手が多ければ、相手先発投手に対し、マッチアップで有利なラインアップを組みやすい。その理由でいろいろなポジションをやらせる。筒香はこの日、2回一死三塁の前進守備で、一、二塁間に飛んだゴロに横っ飛び、逆シングルでミットに収め、一塁ベースカバーの投手にトスと機敏な動きを見せた。

 ケビン・キャッシュ監督は「ヨシの一塁は「(チーム戦略の上で)とても重要。先日崔志万がヒザを痛めたが、そんなときに彼を起用できる」と話した。筒香もすっかりレイズ流にフィット。スネルなしでも今年もあなどれないチームなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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