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センバツ2021

「応援が崩れると、野球部も崩れる」10年ぶり優勝へ一体となる東海大相模の応援委員会/センバツ2021

 

持てるすべての力を出し切る


東海大相模は10年ぶりの決勝進出。アルプススタンドの応援委員会も一緒に戦っている。左は村上胡桃応援団団長、右は曽我友里絵チアリーダー部長


 東海大相模の応援委員会は応援団(3人)とチアリーダー部(29人)で編成されている。新2、3年生で組織的に野球応援をするのは、今回のセンバツ甲子園が初めてだった。

 2019年夏の甲子園。当時1年生だった曽我友里絵チアリーダー部長(3年)は、アルプススタンドを経験しているが、試合中はメガホンをたたくのみ。1年生は「見習い期間」であり、踊ることはできなかった。曽我部長の弟は高校球児であり、中学時代はバドミントン部で活動していたが、野球が生活の中心。東海大相模への入学志望理由も「野球応援」がすべてだったという。

「昨年8月の甲子園交流試合(対大阪桐蔭)はリモート応援(学内の大ホールで吹奏楽部とともに、感染予防対策の下で応援活動を展開)をさせていただきましたが、やはり、現場に勝るものはありません。野球部員が目の前でプレーしている。生の臨場感は最高です」

 昨年のセンバツは選出されていながら、大会が中止。当然、1学年上の先輩の分まで全力を注いだが、声を出すことはできない。

「例年、相模は声が大きくて良いと評価をいただくんですが、コロナ禍で特長が出せません。そこで何ができるかを皆で考え、タブレットを駆使して、細かい振りまで全員がそろうように準備を重ねてきました」

 キレッキレの動きで、アルプススタンドを自らのステージにしていたのが印象的だ。

 アルプス席では、事前に録音した吹奏楽部の音源がスピーカーから流れてくる。お馴染みのテーマ曲に合わせ、応援の指揮を執る応援団は3年生1人、2年生2人である。

 村上胡桃団長(3年)は19年夏の甲子園を観戦して、応援委員会への入部を決めた。中学時代はソフトボールの投手として関東大会出場。入学当初から野球に関わりたいと、応援委員会への入部を考えていたが、勉学との両立への不安があった。しかし、甲子園で応援団が躍動する姿を見て、チャレンジする決意を固めた。

 村上団長の学年は団員が不在であったため、結果的に伝統をつなぎ止めたのである。応援団の野球応援は19年秋の公式戦が最後。村上団長は入部したばかりであり、今大会の甲子園が実質、初の野球場での活動だった。1回戦では卒業したばかりの1学年上の先輩6人が、サポートに駆けつけてくれた。

「応援が崩れると、野球部も崩れる、といつも言われています。1回戦から4試合、野球部の活躍のおかげで、自分たちも成長させてもらっています。私一人では、何もできません。新2年生の2人がいるから活動することができる。いつも助けられています」

 そして、こう続けた。

「今回のアルプスでの応援が実現したのも、大会主催者側の皆さんの大変なご決断が背景にあったと思います。私たちとしては、練習を重ねてきた成果を発揮できる舞台を提供いただき、感謝の言葉しかありません」

 10年ぶりの決勝。東海大相模の応援委員会は学校関係者、野球部のために持てるすべての力を出し切り、グラウンドでエールを送り続ける。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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