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センバツ2021

東海大相模サヨナラVのホームを踏んだ深谷の父はNPB審判員「チーム力の結集だと思います」/センバツ2021

 

急性胃腸炎の主将の代わりに


東海大相模は明豊との決勝をサヨナラ勝ち(3対2)で10年ぶり3度目の優勝。2対2で迎えた9回裏、先頭打者の2年生・深谷謙志郎が三塁前に絶妙なセーフティーバントを決め、最後は決勝点のホームを踏んでいる


 東海大相模は主将・大塚瑠晏(3年)が急性胃腸炎のため、準々決勝から決勝まで3試合、ベンチを外れた。大阪市内の病院に入院しており、閉会式にも出席できなかった。大塚に代わって遊撃手に入ったのは2年生・深谷謙志郎だった。

 明豊との決勝。2対2で迎えた9回裏、先頭打者でセーフティーバントを試みる。サード前に転がすと、一塁へヘッドスライディング。サヨナラの好機をつくり、一死満塁から小島大河(3年)の中前打で、10年ぶりのセンバツ優勝を決めるホームを駆け抜けている。

 遊撃守備でも3試合で無失策。決勝でも球際の強さを見せ、センターラインを固めた。

 NPB審判員である父・篤さんのDNAを継いでいる。この日は仙台への移動日で、決勝はテレビ観戦した。愛工大名電ではイチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と同級生。2年夏は「七番・二塁」、3年春は「一番・二塁」で甲子園の土を踏んだ。高校卒業後は法大、三菱自動車岡崎でプレーし、1999年からプロの審判員の道へ入った。

「試合後は、涙を流していましたね。相当な重圧であったんだろうな、と。私も下級生で出場させてもらっていましたが、息子は今回、控え(背番号16)から急きょ出番ですから、プレッシャーは比較にもなりません。実戦経験が豊富ではない中で、よくやったと思います。本人の努力もあるんでしょうが、そこまで鍛え上げてきた門馬(敬治)監督以下、スタッフの指導力が素晴らしいと思います」

 長男・優一郎さん、次男・太慈郎さんに次ぐ三男が深谷だ。優一郎さんは平塚学園を経て、明星大の4年生としてプレーしている。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた昨年の活動自粛期間中は、自宅近くの河川敷で、2人で練習を重ねてきた。同じ遊撃手であり、深谷は大会期間中も兄からアドバイスをもらっていたという。

 父・篤さんはセンバツ優勝を喜ぶ一方で、どうしても気がかりなことがあった。

「私も高校時代キャプテンでしたので、何よりも、大塚君のことが気になります。病室でどんな気持ちで見ていたのか……。優勝旗を持ちたかったんだろうな、と……。ただ、この緊急事態でも全員で優勝を勝ち取ったのはすごいです。チーム力の結集だと思います」

 攻守の大黒柱であった主将・大塚の穴を埋めた深谷の甲子園での3試合は、財産である。中心選手として期待される、2年秋以降の原動力になるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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