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大洋・別当薫監督は、なぜ途中休養となったのか/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

伏魔殿とも言われた大洋内部


大洋・別当監督。左は平松政次


 今回は『1972年9月18日号』。定価は100円。

 8月31日の午後16時、後楽園球場の報道関係者入り口で、大洋の桜井広報担当が球場入りする記者一人一人に無言のまま文書を手渡した。
 発表、と書かれた文書の内容を要約する。
「かねてから別当君より、チームの不成績を理由に、当分休養したいという申し出があった。
 まだ優勝が決まったわけではないので頑張るように説得したが、これ以上別当君に負担をかけるのも酷なのでやむを得ず休養してもらう。青田コーチが代行の任に当たる」
 書いたのは森社長だった。
 前夜の敗戦で首位巨人との差が7.5ゲームに離れたが、まだ3位。「なんでこの時期に」という驚きの声があちこちから上がった。

 別当薫監督は、
「成績が悪いからといって途中で放り投げるような卑怯な真似はしない。最後までやるつもりだったが、休養しろと言われたからユニフォームを脱いだまで」
 と自身からの申し出を否定。そのあと中部オーナーも事実上のクビであることを明言した。

 今季は江藤慎一ロッテから、シピン、ボイヤーを大金をはたいて獲得し、5月には首位にも立っていたが、故障者が相次ぎ徐々に低迷。ただ、温情オーナーとも言われる中部オーナーだけにシーズン途中の解任はないと思われた。

 ただし、きな臭い雰囲気はあった。1つは以前に書いた球団への1000円札つきの脅迫状だ。別当監督の解任、青田ヘッドの昇格を迫り、殺人予告もあった物騒なものだ。
 これがどうこうというより、新聞記者の中に「なぜいたずらの手紙をマスコミに公開する必要があるのか。本気にしたなら、それより警察に届けるべきだろう」という声が上がった。
 同時にささやかれたのは、反別当の球団関係者がわざとリークしたのでは、という説だ。大洋球団内には派閥が多く、伏魔殿とも言われていた。
 マスコミの監督評も、かなり悪かった。記事にいら立ち、何かと言えば取材拒否。「俺が本気になればお前の腕の一本や二本なあ」とおどされた記者もいたらしい。球界紳士と言われた人だけに意外ではあった。
 四面楚歌の別当監督だが、盛んに確執が言われた青田昇ヘッドに対し
「青ちゃんはよくやってくれた。全情熱を傾けて。ここまでやってこれたのも青田君がいたおかげだ」
 と話していた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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