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【MLB】人気回復へ盗塁を増やそう! マイナー・リーグでの大胆な実験とは?

 

ベースボールの人気の回復のため、マイナーで盗塁の改革を進めていくMLB。盗塁の難易度を緩くして人気を取り戻せるか(写真はイメージ)


 ベースボールリファレンスによると、試合あたりのチームの平均盗塁数が史上一番多かったのは1887年で3個、初期のプロ野球ではおおむね1個を越えており1916年まで続いた。

 17年以降は一転常に1個以下。ベーブ・ルースの登場でホームランが野球の華となり、プロ野球は国民的人気スポーツとなったからだ。それが皮肉にも、今はホームランが多過ぎて、盗塁が少ないため、人気がイマイチ。ルール変更をとMLB機構は躍起になっている。実際、近年盗塁数は減り、2019年は平均0.47個、20年は0.49個だった。

 しかしながらこれは史上最低ではない。一番少なかったのは50年の0.26個、53年が0.27個。ニューヨークでプロ野球の黄金時代と呼ばれた時期である。だから思う。本当に盗塁を増やせば野球は面白くなるのだろうか……。

 2月11日、MLB機構は今季のマイナー・リーグの公式戦で実験的に一部のルールを変更すると発表した。目を引くのは盗塁を増やすための大胆な実験だ。まずは3Aで、一塁、二塁、三塁のベースのサイズを大きくする。今までは15✕15インチだったが、18✕18インチと7.62センチずつ広がる。一二塁間感の距離は11.43センチ短くなる。

 ハイAではけん制のルールを厳しくする。投手はけん制前にプレートを外さないとボークになる。ローAではけん制は1打席あたり2回までで、3回目以降はアウトにできないとボークになる。実験の途中経過を見て、1打席あたり1回までに減らす可能性もある。ちなみにこのルール変更は19年のアトランティック・リーグで実施、70パーセントも盗塁を試みた回数が増え、成功率は81パーセントだった。

 レッドソックスのアレックス・コーラ監督は3月12日オンライン会見でこう話した。「調査によると、ファンは盗塁などベースランニングをより見たいという。であればスピードあるアスリートに身体能力を発揮させるのは良い試み。でも合意できないものもある。例えばけん制で左投手がプレートを外して投げるのは難しい。昨日の試合でうちのエデュアルド・ロドリゲスが試したけど、見ていてつらかった。走者のアドバンテージが大きくなる。記憶が正しければ19年のアトランティック・リーグで快足のリコ・ノエルが1試合に7盗塁をマークした。これは行き過ぎ。注意深くやらないと」とコメント。

 11日の試合、4回にツインズのホルへ・ポランコが右前打で出ると、ロドリゲスは左足を素早くプレートの後ろに外しサイドスローでけん制したが、ポランコは余裕で一塁ベースに戻れた。だがその3球後、ロドリゲスがプレートを外さずに今まで通りのけん制をすると、ポランコは全く動けず、一、二塁間で挟まれアウトになった。違いは歴然としていた。

 一連のマイナーでの実験を精査し、良かったと判断されたものは、近い将来MLBの野球で採用されることになる。盗塁しやすくなれば単打の価値が上がり、一番から九番まで全員がホームランを狙うのではなく、ゴロを転がしスピードを生かす打者群が復活する。

 本当に野球は面白くなるのか。実験の成り行きはとても興味深いのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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