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背番号物語

【背番号物語】広島「#12」九里亜蓮が「11」になったのは広島の“お家芸”? 系譜に渋く輝くのはチームの功労者

 

阪神から“輸入”したバッテリーの系譜?


昨年まで広島で背番号「12」を着けていた九里


 一般的に10番台の背番号は投手のナンバーで、その中でも捕手が存在感を放っているのが「12」。この傾向は広島も同様で、「32」で現役を続けている捕手の白濱裕太が2004年から07年まで「12」だった姿を知っているファンもいることだろう。

 白濱は「12」では一軍出場のないまま背番号を変更したが、これまで広島の「12」に名を連ねた選手の中で、もっとも着けた期間が長いのは、同じく捕手の田中尊だった。昭和の黄金時代を知る長いファンには、古葉竹識監督を支えた参謀として、その名を知る人も少なくないだろう。やはり黄金時代を謳歌していた南海(現在のソフトバンク)でキャリアをスタートさせながら、芽が出ないまま1957年に広島へ移籍してきた田中。奇しくも広島市民球場が完成したシーズンでもあったが、黄金時代どころか絶望的とさえいえた資金難から抜け出したばかりの広島で、古巣で「64」だった無名の捕手は新たに「12」を背負い、「闘志なき者は去れ」と檄を飛ばした白石勝巳監督の信頼も得て、着実に出場機会を増やしていく。

 初めて出場100試合を突破したのは61年。打撃に難はあったものの、その後は司令塔として長きにわたって低迷が続くチームを支え続けた。72年オフに引退してからもチームに残り、指導者として黄金時代の礎を築く。広島の歴史を語る上で欠かせない功労者のひとりだ。

 ただ、広島の「12」で最初の捕手は田中ではない。広島がプロ野球に参加した50年の1シーズンだけで「12」は右腕の市田夏生と捕手の山崎明男が着けて、翌51年には外野手の山口政信が継承。山口はタイガース(阪神)の結成に参加して初代の「8」となり、カーブ打ちの名人として名を残す巧打者で、一時はプロ野球から離れていたが、広島の創設にも参加して「4」を着け、2年目に「12」へと変更したものの、これがラストイヤーに。その翌52年に後継者となったのが、やはりタイガースで初代の「17」だった捕手の門前真佐人だった。

 奇しくも阪神の功労者でもある投手と捕手が1年ずつリレーすることになった広島の「12」だが、大洋(現在のDeNA)でも「17」だった門前は広島1年目こそ「12」を背負ったものの、すぐ「17」に変更。「12」は右腕の榊原盛毅に受け継がれる。榊原が引退したのが56年オフで、広島でも司令塔を担った歴戦の門前が引退したのは57年オフ。「12」と司令塔の座、ともに継承する形となったのが田中だった。

 ただ、田中が引退して2年後の75年に広島は初のリーグ優勝、そのまま黄金期に突入して、戦力にも安定感が見られるようになっていった一方で、「12」の系譜は不安定になっていく。5年を超えて「12」を着けたのは、2020年まで背負っていた右腕の九里亜蓮が2人目となる。

移籍してきた名選手も


85年に背番号「12」で9勝をマークした高木


 この2021年から九里は「11」となり、「12」はドラフト3位で入団した新人で右腕の大道温貴に受け継がれている。投手の背番号が1つだけ小さくなるのは広島の“お家芸”ともいえるもの。「15」から「14」に変更して満開の花を咲かせたのが右腕で“炎のストッパー”と呼ばれた津田恒実(恒美)だが、「12」から「11」にも前例がある。津田と同じ1982年に入団した左腕の高木宣宏は1年目から「12」を背負い、85年に9勝を挙げて球宴にも出場して「11」に変更。だが、その後は肩痛に苦しみ、89年には「12」に戻したものの状況は好転せず。90年オフに西武へ移籍してからは一軍での登板もかなわなかった。

 高木が「11」に転じた86年に後継者となったのが近鉄から移籍してきて3年目を迎えた内野手の森脇浩司で、時は流れ、白濱の後継者となったのが同じく内野手で新人の小窪哲也だったが、森脇は87年シーズン途中に南海へ移籍、小窪も2年で「4」に変更している。

 田中と同様、指導者としても功績のある森脇だが、森脇のように広島へ移籍で加入した選手が「12」を背負うことも多く、75年には阪神から来た右腕の若生智男が背負って初優勝に貢献。96年からはダイエー(現在のソフトバンク)から来た同じく右腕の加藤伸一が99年まで着けてオリックスへ移籍していった。

【広島】主な背番号12の選手
田中尊(1957〜72)
高木宣宏(1983〜85、89〜90)
白濱裕太(2004〜07)
九里亜蓮(2014〜20)
大道温貴(2021〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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