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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

延長戦なしのルールにフィットし、接戦に強さ。今季の広島は去年とここが違う!

 

厚みが増したリリーフ陣


4月9日の巨人戦(マツダ広島)では、大瀬良(左)から最後は栗林(右)の完封リレーで接戦を制した


 現在行われているカードで、セ・リーグも開幕から対戦カードが一巡。各チームとも昨シーズンとの戦い方の変化なども明らかになってきた。昨年の5位からの巻き返しを期す広島は、4月9日まで13試合を戦い、7勝5敗1分け。スタートダッシュに成功、とまでは言えないが、まずまず堅調な戦いを展開していると言っていいだろう。

 中でも、4月9日の巨人戦(マツダ広島)の勝利は大きかった。前日はヤクルトを相手に1回表に4点を挙げながらの逆転負けで今シーズン初のカード負け越し。さらには主軸打者の松山竜平が守備の際に足を痛めたり(翌日一軍登録抹消)、同一イニングに暴投と捕逸が出たりという、今季で最も内容の良くない負けだったからだ。しかしカープナインはここで踏みとどまった。大瀬良大地菅野智之のエース対決を、大瀬良から森浦大輔塹江敦哉栗林良吏の「新・勝利の方程式」による完封リレーで守り勝った(2対0)。

 今季の広島の好成績は、この勝利に象徴されるように、接戦で勝負できるようになったことが大きい。昨年は2点差以内のゲームは17勝22敗と負け越した広島だが、今季はまだ試合数は少ないとはいえ、4月9日現在で4勝3敗と勝ち越しに転じている。

 投手陣では、やはりリリーフ陣の安定だ。昨年までのクローザーのフランスアは戦列離脱しているが、栗林、森浦、大道温貴のルーキー3人が奮闘していることにより、むしろ勝ちパターンで使えるコマが増えたことが大きくプラスを生んでいる。

 起用法にも変化が見られ、昨年はコマ数が少なかったため、勝負と見ればいつも塹江、ケムナ誠、フランスアをつぎ込むしかなかったが、今季は前記の「新・勝利の方程式」の3人を基本にしつつも、3連投を避けながら大道やケムナを勝ちパターンに組み込むリレーも稼働している。もちろん、プロで1年間投げたことのないルーキー投手が多く入っているため、どこかで誰かに疲れが来るリスクは内包しているが、それでも昨年の形に比べれば疲労度を分け合うことができ、長持ちすることは間違いないだろう。

6回から代走起用のケースが多い


 そして攻撃のほうでは、今季掲げた機動力野球の復活が延長戦なしの今季の特別ルールにフィットし、カープらしい競り合いに強い形がつくれているのが興味深い。目につくのは、先発メンバーに6回から代走を使って攻めるケースが多いことだ(ここまでにすでに5度)。延長戦ありなら、そのあと回るかもしれない打席を考えて早い仕掛けはしにくいが、延長戦なしの場合は、攻撃機会も少なく、まずはそのイニングの得点を目指して動くことが効果的だ。

 そして、そういう起用を可能にさせるのが、ほとんどの控え選手が複数ポジションを守れるという、広島ならではのチーム構成だ。代走で多く使われる曽根海成や、現在はファームにいるが上本崇司あたりは内野でも外野でも守れるし、矢野雅哉も内野ならどこでもOK。さらに代走要員以外の選手も、ファーストとサードとレフトが守れる選手は多く、捕手の坂倉将吾磯村嘉孝もいざとなればファーストに入れる。普通は代走をゲーム中盤からどんどん繰り出せば、終盤は手詰まりになりやすいのだが、広島は守備位置を融通しながら、手詰まりなくゲームが運べるのだ。実際、ゲーム中盤に代走に出た曽根がそのままサードに入り、最後の打席に代打を送って、締めの守備には守備固めの三好匠が入る、などという、普通はあまり見られない4段構えの野手起用も見られる。

 単純なチーム盗塁数にはあまり表れていないが、例えば9日のゲームでも、6回に代走に出た曽根が盛んに塁上で菅野を揺さぶったり、代走から出た大盛穂が8回に守備でダイビングキャッチをしたりと、中盤から出てくる、足と守備に自信の「接戦仕様」の選手たちが活躍する場面は少なからずあった。

 広島は戦前の下馬評では、「4位あたり」と予想する声が多かった。確かに表面上の戦力の足し算では巨人や阪神ほどではないかもしれないが、幸い、大瀬良、森下暢仁九里亜蓮の三本柱を持つ先発投手陣もあって、ロースコアの戦いに持ち込める試合は多いはず。この、延長なしルールにフィットするチーム構成を武器に、昨季とは違って接戦をしっかり拾っていくことができれば、今後、V戦線に浮上できる可能性は十分あると見る。

文=藤本泰祐 写真=BBM
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