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日本人メジャーの軌跡

史上30人目のMLB3000安打を記録したイチロー「小さなことでも満足するのは大事」/日本人メジャーの軌跡

 

日本で一流打者の証といえば通算2000安打で、名球会入りの条件となっている。メジャーでは、殿堂入り間違いなしのラインは、投手なら通算300勝。打者では500本塁打か3000安打と言われてきている。イチローは日本人メジャーで初めてその数字を達成したのだ。

マーリンズ在籍時の2016年に


マーリンズ時代のイチロー


 イチローがメジャー通算3000安打を達成したのはマーリンズ在籍時の2016年。6月15日には日米通算でピート・ローズのメジャー通算4256安打を抜いた。次の目標はメジャー3000安打。だが道のりは平坦ではなかった。前半戦を2990安打で終えたが、あと10安打に22試合もかかった。代打で安打を重ねることは難しかった。

 到達したのは8月7日、デンバーでのロッキーズ戦だった。あと1安打で臨んだこの試合、7試合ぶりでスタメンに名を連ねた。六番・中堅だった。3打席凡退して臨んだ7回の第4打席。左腕ラシンに対して2ボールからの3球目。高く上がった打球は右翼に飛ぶ。昨季巨人に在籍したパーラの頭上を越えてフェンス直撃。イチローは楽々三塁に到達し、メジャー史上30人目の3000安打とした。三塁側ダッグアウトからチームメートが飛び出し、抱き合って祝福。イチローは笑顔を浮かべた。ロッキーズの選手からも拍手が送られる。イチローは総立ちの観客に向かってヘルメットを取って応えた。

 27歳でメジャー・デビュー。16年目での到達は、ローズと並ぶ最速だった。試合後の会見で「達成感とか満足感というのは、味わえば味わうほど前に進めると思っているので、小さなことでも満足するというのは大事なことだと思う。だから僕は今日この瞬間とても満足だし、味わうとまた次へのやる気、モチベーションが生まれてくると経験上信じているので、これからもそうありたいと思う」と、まだまだ前を向いていく気持ちを口にしていた。

 この後、翌17年もマーリンズでプレーし、18年にマリナーズ復帰。19年3月の東京ドームでの2試合を最後に引退した。01年から19年までのメジャー生活で通算2653試合に出場して3089安打で通算打率.311、117本塁打、780打点、1420得点、509盗塁。新人王とMVPが一度ずつ、オールスター選出10度、ゴールドグラブ賞受賞10度。殿堂入り間違いなしの堂々たる成績だ。引退後5年を経過して殿堂入り候補になるのは25年である。

『週刊ベースボール』2021年3月15日号(2月24日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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