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背番号物語

【背番号物語】西武「#5」辻の系譜を「気分一新で」着けた和田。最長は名将として大成した二塁手

 

外崎の死球禍は日本一の序章?


背番号「5」を着け、黄金時代の西武で名二塁手として活躍した辻


 現在は外崎修汰が背負っている西武の「5」。この2021年で4年目に突入したばかりであり、まだ外崎よりも歴代の選手たちのほうがインパクトを残している状態だろう。誰を真っ先に思い浮かべるか、となると、大きく票が割れそうだ。

 20世紀の黄金時代を知るファンであれば、現在の監督でもある辻発彦を挙げてくるはずだ。ドラフト2位で1984年に入団、1年目から「5」を背負い、着実に出場機会を増やして、3年目の86年には二塁のレギュラーに定着した。翌87年はオープン戦の死球禍で出遅れたものの、巨人との日本シリーズでは外野の緩慢な守備を突く好走塁で日本一を呼び込む。ゴールデン・グラブは8度を数え、93年には打率.319で首位打者に。96年にヤクルトへ移籍するまで12年間「5」を背負い続けた。辻の系譜を継ぐ存在といえそうなのが現役の外崎だ。2021年は開幕して早々、死球禍に見舞われたが、辻の前例もある。西武がパ・リーグの頂点に輝いたとき、外崎が復活という以上の活躍で待望の日本一を呼ぶかもしれない。

 一方、20世紀を知らない若いファンにとっては、西武の「5」といえば02年のリーグ優勝に大きく貢献した和田一浩になるのではないか。97年に捕手として入団して、与えられた背番号は「22」。かつて捕手の田淵幸一が着けていた背番号でもあり、強打の捕手として期待された和田にふさわしいナンバーだったが、辻の移籍で名バイプレーヤーの奈良原浩が後継者となったものの、2年で「5」を継承した捕手の中嶋聡が、捕手のイメージが強い背番号を着けていた和田に“交換”を提案する。外野手との併用に甘んじていた和田は「自分も気分を一新したかったですし」と、2000年から「5」を背負うことになった。

背番号「5」を着け、強打者へと成長していった和田


 和田の飛躍が始まる。翌01年に82試合の出場で16本塁打。続く02年には外野手に転向し五番打者として33本塁打、81打点、打率.319の活躍を見せると、以降3年連続で30本塁打を突破、05年には153安打、打率.322で最多安打、首位打者のタイトルに輝いた。和田は07年オフにFAで中日へ移籍、新天地でも「5」のまま通算2000安打にも到達している。

 その一方で、西武の「5」は辻と同じ二塁手で天才的な打撃センスを誇る石井義人が継承。12年に石井が巨人へ移籍すると、原拓也が1年、原とのトレードでオリックスから来た山崎浩司が2年、1年の欠番を挟んで鬼崎裕司が2年と、渋めの短期間リレーが続いている。ただ、これは和田がプロ野球を代表する「5」の選手に成長した“突然変異”といえる存在なだけで、辻の前も九州ラストイヤーから着けて内野も外野も守った山村善則から遊撃手の大原徹也が継承した矢先のシーズン途中に移籍と、安定感を欠く系譜。1年の欠番を挟んで継承したのが辻だった。

系譜で最初のタイトルは本塁打王?


ライオンズひと筋で14年間、背番号「5」を着けた仰木


 短期間リレーはチームが太平洋だった時期からで、クラウンを経て西武まで続いたもの。この過渡期は太平洋の最後、クラウンの最初となった坪井新三郎の2年が最長だ。太平洋の最初、73年が自身のラストイヤーとなった高木喬は西鉄で最後の「5」となった内野手で、西鉄へは68年の移籍だが、古巣の近鉄でも1年目から「5」で、11年のキャリアを通して背負い続けた。

 高木は一塁手だが、西鉄1年目、チーム名が西鉄クリッパーズだった1950年に初代の「5」となったのは遊撃手の長谷川善三で、ライオンズ“元年”には「9」に。その51年に2代目、ライオンズとしては初代となった深見安博は翌52年のシーズン途中に大下弘とのトレードで東急(現在の日本ハム)へ移籍して、プロ野球で唯一の2チームにまたがる本塁打王に輝いている。深見の移籍で空席となった「5」は、54年、投手として入団しながらも春のキャンプで二塁手に転じたばかりの若者に受け継がれることになる。のちに近鉄、オリックスの監督としても結果を残した仰木彬だ。

 西鉄の黄金時代を頭脳派の二塁手として支え、ライオンズひと筋14年を「5」で通した仰木。時が流れ、監督としても手腕を発揮している辻は、名二塁手としては間違いなく仰木の後継者だ。名将の栄光を継承する可能性も低くない。

【西武】主な背番号5の選手
仰木彬(1954〜67)
高木喬(1968〜73)
辻発彦(1984〜95)
和田一浩(2000〜07)
外崎修汰(2018〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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