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【MLB】マイナーでロボット審判の実験。だがロボットにストライクゾーンをどう教えればいいのか

 

ロボット審判の実験を始めたMLB。打者の構えもさまざまで、投手の球種の曲がり方もさまざま。その中でロボットにどうストライクゾーン認識させていくのか……実験は始まったばかりだ


 メジャーでは、多くの球団が球審たちのヒートマップを独自に作っている。ルール上のストライクゾーンとは別に、実際にプレート上のどこをストライクと判定してきたか、傾向を可視化し、ゲームプラン作りに役立てる。周知のとおり、ストライクゾーンはルールで決まっているが、コールするのは球審であり、個々の裁量に任されている。

 ゆえにルールとの間で齟齬(そご)をきたすし、人によって個人差も生まれる。日米のプロ野球で異なるとか、国際大会だと違うとか、あるいは新人選手はベテランのスター選手に比べて不利になるなど……。だがメジャーはそういった過去の曖昧さを一掃しようとしている。

 今季5月4日に始まるフロリダのローAサウスイースト・リーグでロボット審判を実験。9つの球場のうち8つにシステムを置く。2019年、メジャーは最初の実験を独立系のアトランティック・リーグとアリゾナ秋季リーグで実施した。ルール上、ストライクゾーンは本塁ベースの形を底面とした五角柱で、この空間を通過すればストライク、一部分かすめただけでもいい。そのままロボットの頭脳にインプットし判定させたが、ワンバウンドしたり、とても高かったり、球場にいたどの人間もはっきりボールだと思う球を何度かストライクとコールしてしまった。

 ストライクゾーンは打者がバットで打つことが可能でないといけないが限りなく難しい。はっきりしたのは、私たち人間がこれまでの経験から覚えてきたストライクゾーンは公認野球規則の規定どおりでなかったということ。そして今後人間ではなくロボットに委ねるなら、そこは曖昧であってはならない。三次元の立体で果たして良いのか、本塁ベースの前の部分、二次元の長方形を基盤に考えるべきではないのか。

 加えてルールのストライクゾーンは角ばったものだったが、球審のヒートマップを見ると角は角ばってはおらず丸かった。これもどうするのか。ロボットに任せれば、審判ごとの個人差は確実になくなりゾーンは統一される。要はロボットにどうストライクゾーンを教えるかなのである。

 サウスイースト・リーグではまず個々の打者の身長を測定、ストライクゾーンの一番上はその選手の身長の56パーセントの高さ、一番下は身長の28パーセントの高さとする。ホームプレートの前面、二次元の平面に設定される。真っすぐないし、高速の変化球ならそれでいいかもしれない。難しいのはカーブや、大きなスライダーである。

 打者の顎(あご)に向かって行くような球に打者は一瞬のけぞるが、そこからするどく曲がってストライクゾーンに入っていく。こういう大きな変化球に対応するには三次元でも見ていく必要があると思う。目指すべきは、長い歴史を経て、野球関係者が今現在正しいと信じているストライクゾーンに限りなく近いものを、ロポットがストライクとコールできるようにすること。

 そのために今年は実験を通して、選手、監督、コーチ、審判からフィードバックをたくさんもらい、出てきた疑問や質問に一つひとつ対応し、答えを出す。そして未来に渡って使える、曖昧ではないストライクゾーンを作っていくことが必要なのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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