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日本人メジャーの軌跡

どん底からはい上がり世界一に貢献した田口壮。勝負強さを発揮して穴のない選手に/日本人メジャーの軌跡

 

田口壮は2001年終了後にFAとなり、02年1月にカージナルスと契約。マリナーズ・イチロー、メッツ・新庄剛志に続く日本人野手3人目のメジャー・リーガーである。ただ、前の2人と違い、メジャー・デビューまで時間がかかった。開幕をマイナーで迎え、6月10日に初めてメジャーの舞台に立ったのだ。

開幕当日にマイナー行きの通告も


田口壮


 奇縁と言うべきだろうか、相手はイチローのいるマリナーズだった。1991年のドラフトで指名されてオリックスに入団した間柄。田口が1位、イチローが4位。その後はイチローとともにオリックスの外野で活躍した。

 デビュー戦は九番・中堅で先発出場。マリナーズの技巧派左腕、ジェイミー・モイヤーの前に3打席とも内野ゴロに倒れた。カージナルスは0対10と、モイヤーに完封負け。ちなみに、この試合でイチローは5打数3安打3得点2打点の活躍だった。

 田口は4試合出場も安打を記録できず、6月15日を最後にマイナーへ戻った。9月7日のカブス戦でメジャーに復帰し2回に代打で右前に弾き返してメジャー初安打をマークした。この試合を含めて9月は15試合で11打数6安打の打率.545。結局1年目は19試合に出場し、15打数6安打の打率.400だった。

 日本ではオリックスの主力だったが、メジャーでは苦しい思いをした。1年目はマイナー暮らしが長かったのだが、3Aだけでなく2Aでもプレーをした。2年目の03年は開幕メジャー入りにまい進していたが、なんと開幕当日にマイナー行きを宣告された。これはさすがにショックだったという。だが、そうした経験を乗り越えて、頼りになる脇役として存在感を示した。04年から4年連続で100試合以上出場した。

 勝負強さも特筆される。とりわけ06年のリーグ優勝決定シリーズ第2戦、6対6の9回にメッツのクローザー、ビリー・ワグナーから勝ち越し本塁打を放ってリーグ優勝に貢献した。

 結局メジャーでは8年間プレー。通算672試合に出場して382安打19本塁打163打点の成績だった。そして06年にカージナルスで、08年にフィリーズでチャンピオンリングを手にした。

 オリックス時代にイチローの圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにして「自分はどうやったらこの世界で生き残れるか」と考え、攻守走に穴のない選手を目指して努力を重ねた20年間のプロ生活だった。それがいま、指導者として大きな財産となっているようだ。

『週刊ベースボール』2021年3月22日号(3月10日発売)より

文=樋口浩一 写真=Getty Images
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