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神奈川夏に“公立校旋風”を誓う屈指の進学校・川和「横浜、東海大相模とも組んで戦えるレベルに」

 

「学業と野球には、共通点がある」


川和高は135キロ右腕・吉田悠平(3年、左)と右スラッガー・荒畑諒人(3年、右)が投打の軸。強豪私学がひしめく激戦区・神奈川において、公立校で旋風を起こすことを固く誓っている


 神奈川県立川和高等学校は県下屈指の進学校だ。今年は東大4人、横浜国立大31人など国公立大学に加えて、早大92人、慶大37人ら超難関私学にも多くの合格者を出している。

 学業と野球には、共通点があるという。就任8年目の川和高・伊豆原真人監督は語る。

「中学時代、オール5の成績である生徒がオール3の生徒の取り組みを見て『甘い』と感じたのと同様に、強豪私学の野球部員は、私たちの動きを『甘い』と見るかもしれない。技術的な実力差を埋めるのは難しいかもしれませんが、姿勢、集中力、気を付けないといけない部分。ここは五分にできる分野です。『コイツらやるじゃん』と思わせる段階に持っていき、横浜、東海大相模とも組んで戦えるレベルになろう、と言っています。どんなクジでも16強へ進出するにはシード校、ノーシード校の私学2校に勝たないといけません」

 昨秋は桐光学園高との県大会初戦(2回戦)で敗退(0対6)。打力アップをテーマに、冬場は140キロ超のマシンを打ち込んだ。今春は日大藤沢高との初戦(2回戦)で敗退(4対7)も、相手と同じ8安打を放ち、成果を残した。強豪私学2校との対戦は、川和にとって学習の場となり、今夏の目標は4強である。

 同校野球部OBには元ヤクルトの左腕・加藤幹典(慶大)がいる。最速135キロの182センチの右腕エース・吉田悠平(3年)は先輩の背中を追い、高校卒業後は東京六大学(神宮)でプレーすることを目指している。中学時代に在籍した横浜緑シニアではエース・四番で県大会4強。当初は推薦入試で県内の私学へ入学する意向を持っていたが、川和高の学校見学と部活体験会での校風に惹かれ、同校への進学を決めたという。

 2年夏は同学年で唯一、レギュラー(一番・左翼)で先発。「先輩たちが甲子園を目指す大会が中止となってしまい、自分が出て良いのか? と……。でも3年生は『お前が出て負けるなら仕方ない』と。ありがたかったですし、経験を生かす意味でもこの夏は、仲間と1日でも長く野球をしたい」と決意を語る。

チームスローガンは「覚悟」


 今春の日大藤沢高との2回戦で左越えソロ(公式戦初本塁打)を放った超攻撃的一番・荒畑諒人(3年)も、大学でのプレー継続を希望している。横浜都筑シニアでは県大会4強。183センチ74キロの堂々とした体格で、同校が昨春に導入した「ラプソード」における打球速度は強豪私学の主力打者に匹敵。エースで三番の吉田も高校トップレベルの数字をたたき出す。本来、荒畑は四番に据えてもいい強打者であるが、伊豆原監督には「振れる子を前に置く」というチーム方針があり、攻撃陣の先陣を斬る役割が期待されている。

 荒畑には忘れられない夏がある。2年前、相模原高が横浜高との県大会準々決勝を制して、県立校が準決勝へ進出する快進撃を見せた。

「希望や夢を具体化。切り開いてくれました」。同じ公立勢に、勇気を与えてくれたのである。

 荒畑は言う。

「強い私学と対等に戦い、4強へ進出したい」

 チームスローガンは「覚悟」。進学校だと、仮に野球が思うようにいかないと、勉強に逃げるケースもあるというが、川和高にはそれがない。文武両道。2つを極めることが、真の人間的な成長につながる。

 3年生11人、2年生28人に1年生20人が加わり、グラウンドには活気がある。川和高は今春の県大会2回戦敗退により、今夏はノーシード校も、不気味な存在だ。攻撃力には絶対の自信を持っており、夏までに課題の守備力が強化されていけば、激戦区・神奈川において「台風の目」になるかもしれない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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