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春季神奈川大会3回戦敗退も 「劇的に変わった」53年ぶり夏甲子園へ着実に歩む武相

 

昨夏からチームを率いるOB監督の下で


武相高の2年生四番・竹井颯大はパワフルな打撃と柔らかさが同居している。将来性の高い右のスラッガーだ


 大会に出場している以上、すべての試合を勝ちにいく。敗退すれば当然、悔しい。しかし、「負け方」が次につながることもある。

 武相高(神奈川)は昨年8月、同校OBの豊田圭史氏が新監督に就任した。前任の富士大では北東北大学リーグ10連覇。コーチ時代を通じて山川穂高(現西武)、外崎修汰(現西武)、多和田真三郎(現西武)、小野泰己(現阪神)らを育成。指導力に定評があり「母校再建」のため、大学球界から高校球界へと転じた。

 母校へ戻って2日目には県高野連主催の独自大会1回戦を突破し、4回戦進出。秋の新チームでは1回戦で、横浜高に5回コールド敗退(0対11)を喫した。できる限りの準備をして臨んだが、やはり、指揮官の方針を浸透させるには、時間が足りなかったという。

 一冬を越えた春の県大会。神奈川工高との初戦(2回戦)を突破したものの、星槎国際湘南高との3回戦で7回コールド敗退した(3対12)。昨秋に続くコールド敗退でも、内容が違う。豊田監督が何より成長を感じたのは戦う姿勢。最後まであきらない。言葉で言うには簡単だが、実践するのは容易ではない。

「誰一人、下を向く者はいなかった。打席では執念を出してボールに食らいつき、最後まで声を出し続けてくれた。力のないチームだからこそ、全体としてやれることを100パーセント、やり遂げたのは評価できる。今回は無観客試合(4回戦以降は有観客)でしたので、保護者だけでしたが、野球部OBにもぜひ、後輩の姿を見ていただきたかった。夏までに、技術をつけていきたいと思います」

 練習は鍛錬の場だ。課題を一つひとつ克服するグラウンドは、張り詰めた空気が流れる。また、全力疾走、全力発声を徹底している。

「練習ではストイックに、とことん突き詰める。公式戦は発表会。試合の結果はメンバーを決め、起用した監督の責任です。ひるまず戦ってほしい。ポジティブに、ベストを尽くせるよう、最後は監督が背中を押したい」

ドラフト対象選手にリストアップされた2年生四番


 熱血指揮官の思いは、生徒たちに届いている。2年生四番・竹井颯大は言う。

「あいさつ、礼儀と細かい部分まで指導してもらい、将来のことも考えてくれます。豊田監督と出会えて良かったです」

 竹井は右のスラッガー。視察したある球団のスカウトから高い評価を受け「2022年のドラフト対象選手」にリストアップされたという。豊田監督は「打撃は上半身が柔らかく、守備もハンドリングにセンスを感じる」とDeNA宮崎敏郎タイプと分析する。本職は三塁手だが、今後の可能性を広げるため、練習時は遊撃に入り、軽快な動きを披露していた。

 好きな選手は日本ハム中田翔だ。「大事な場面での一発、プレッシャーに打ち勝ち、チャンスに強い打者を目指す」と発言も頼もしい。古豪復活のキーマンとして期待されている。

 武相高は過去4回、夏の甲子園に出場しているが、すべて1960年代(64、65、67、68)に集中している。あくまでも、今夏に目指すのは53年ぶりの甲子園出場だ。

 春の県大会敗退後、チームを一度「解体」した。練習では4チームに分けた紅白戦を実施。豊田監督はもう一度、フラットな目で、3学年73人の部員の力を見極めている。夏の県大会のベンチ入りは20人。実戦練習では故障で動けない春のレギュラー選手2人が、球審や塁審と裏方役を買って出ていた。もちろん、レギュラー争いに再び参戦するための、束の間の休止期間である。

「私から毎年、同じことを言わせるのではなく、先輩が後輩へと部の決め事を伝えてほしい。それが文字どおり、武相の伝統になります。この春のセンバツを制した同じ神奈川県内の東海大相模は、チームとして守らなければならない徹底事項が意思統一されていました。与えられた役割を全力で取り組む人間になれば、社会に出て心配することはないです」

 武相グラウンドを訪れたある関係者は、キビキビとした選手の動きを見て「劇的に変わった」と目を点にさせていた。武相は目標の甲子園出場へ、着実に前へと歩みを進めている。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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