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阪神・村山実、最後の登板で巨人が栄光の8連覇を達成(前編)/週べ回顧1972年編

 

 3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

前日には脅迫電話騒動も


若き日の村山実


 今回は『1972年10月23日号』。定価は100円。

 1972年、巨人が8連覇を飾ったのは、10月7日、甲子園の阪神戦だった。
 まずその日の午前10時だった。巨人の宿舎竹園旅館のロビーに、いつものように早起きし、散歩しようとしていた長嶋茂雄が降りてきた。
 このとき玄関が突然、騒然とする。厳しい表情をした警官15人が入ってくると、電話に次々逆探知機をつけ始めた。
 それより少し前、兵庫県警に、
「竹園旅館を爆破するからな」
 と脅迫電話があったらしい。しかし、さすがに警察にかけたのはまずかったか、そのあと逆探知装置にひっかかってスピード逮捕されてしまった。
 選手たちは8月の中日球場の爆弾騒ぎの経験もあったのだろう。どこかのんびりムードで、長嶋など、
「へえ、またですか。いたずらでしょう」
 と気にする様子はなく、散歩に出かけてしまった。
 そのあと、ロビーに降りてきた、ほかの選手も「犯人はどんなヤツなんだろう」としばらくは盛り上がっていたが、すぐ話題がそれていた。
 それはそうだ。すでにマジックに2。この日の阪神戦に勝てば、8連覇が決まるのだから。

 阪神の先発は、かなり前から村山実兼任監督と言われていた。というか、本人がそう言っていた。「これを現役最後の試合にしたい」とも語り、スタンドに家族を呼んでいた。
 渋い顔をしていたのが金田正泰代行監督だ。
「相手の優勝がかかっている試合やから、うちとしても絶対に負けられない。その大事な試合に本当に勝つつもりならほかのピッチャーを使う手もあったのに」
 もちろん、村山にしても単なる思い出づくりにするつもりはない。自分の手で勝利し、巨人の優勝を先延ばしにさせるつもりでいた。
「長いこと声援を送ってくれたファンのみなさんに満足してもらえるピッチングをしたい。ワシは1球1球に魂を込めて投げまくる」
 村山引退を聞いた、ライバル・長嶋茂雄も燃えていた。
「彼も僕を燃えさせた一人ですし、僕の知る限りではやはり超一流の投手。その彼のベストの試合というからには、ベストを尽くして立ち向かっていかなくては」

 では、あしたに続きます。

<次回に続く>

写真=BBM
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