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プレミア12の日本対豪州。二死三塁から投前へのセーフティーバント。どう守れば良かった?【後編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2019年のプレミア12のオーストラリア戦で、侍ジャパンの源田壮亮選手が二死三塁からセーフティーバントを試み、三塁走者の周東佑京選手がホームインしたケースについて質問です。このとき、オーストラリアのピッチャーは目の前に転がってきたゴロを処理して周東選手にタッチに行き、結果、すり抜けられ、一塁も間に合わずオールセーフで失点しました。守備側はどう守ればよかったのですか。(岐阜県・28歳)


1点を追う7回、二死三塁から源田壮亮が意表を突くセーフティーバント。三走の周東佑京がタッチをかいくぐり、同点に追いつく


A.タイミング的にはホームへ投げてもアウトの可能性大。自らタッチに行くのならば、ホームベースに向かうべきだった

 前編の続きです。守備側の選手たちからすれば、想定外のセーフーティバントではありましたが、ピッチャーゴロを処理したウィルキンズがやや後方から目の前を走ろうとする周東選手にタッチにいった、その判断は決して悪くなかったと私の考えを説明しました。手の届く範囲だったわけですからね。それでも間に合わなかったのは周東選手の足が彼らの想定以上に速く、また、ホームに回り込まれてわずかにタッチが届きませんでした。

 これに対処するにはほかに3つ選択肢があり、1つめが「打者走者を殺しにいく」でしたが、捕球した位置と体勢、ZOZOマリンの人工芝(甲子園の土のグラウンドであれば、話は別です)を総合的に判断すると、「微妙」というところまで解説しました。

 2つめはキャッチャーに投げる、またはトス(グラブトスも含む)することです。タイミング的に、それならばホームで周東選手をアウトにできていたと思います。少し追って、間に合わないと判断してからホームへ投げてもギリギリ間に合うようなタイミングだったのではないでしょうか(ちなみに、タッチプレーです)。ただ、問題はやはり、ピッチャーのフィールディング(守備能力)で、投げるにしても、トス、スローの判断と正確性が求められ、グラブトスをきちんと練習していないと簡単ではありません。

 日本のピッチャーならば、こういった細かいプレーをアマチュア時代から練習でこなしていますし、日本代表クラスではフィールディングもうまい選手も多いですが、このときのオーストラリアのピッチャーがどうか、判断はしかねます。

イラスト=横山英史


 そして3つめが最も現実的で確実な方法です。ピッチャーゴロを捕球した瞬間に、ウィルキンズはタッチにいくと判断を下したのですが、このとき、周東選手を走路上でアウトにしようとせず、ホームベースに向かって走り、先にベースにグラブを到達させて待てば、アウトにできていた可能性は非常に高いと感じました。追いかけるから回り込んでかわされてしまったわけですが、ランナーは必ずホームに触れに来るわけですから、ここで待つことが確実だったのではないか、と私は考えます。

<「完」>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2021年3月22日号(3月10日発売)より

写真=BBM
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