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背番号物語

【背番号物語】近鉄「#15」渋い投手たちの系譜で強烈なインパクトを残す“狂乱の助っ人”とは?

 

5年に満たない在籍ながら


最後は不祥事で退団も打撃は本物だったデービス


 戦前の若手時代は投手を中心に、戦後に円熟味を増してからは打者として“二刀流”の活躍を見せた西沢道夫中日で永久欠番にした「15」。21世紀に広島でも右腕の黒田博樹が永久欠番にしており、2チームで永久欠番となる栄光の背番号となった。一般的に「15」は投手ナンバーで、打者は“少数精鋭”。多くの投手たちの中で、少数派の打者が強烈なインパクトを残している。

 この傾向は近鉄も同様。いや、その最たるものが近鉄かもしれない。近鉄の「15」といえば、多くのファンが真っ先に思い浮かべるのは、“狂乱の助っ人”デービスだろう。5年に満たない在籍だったが、その存在は強烈だった。悪名は無名に勝る、と言われるが、確かに悪名は残したものの、実力は確かで、悪名だけで終わらないのがデービスだ。

 最終的にタイトルは当時あった最多勝利打点1度のみだったが、安定感、長打力、勝負強さ、すべてを兼ね備えた強打者だった。1984年、来日1年目のマネーがシーズン途中に退団。その後任として来日して、マネーの背番号も継承したのがデービスだ。投手のクセなどをメモするなどマジメで、日本の野球に慣れるのに時間はかからなかった。翌85年はロッテ落合博満が三冠王に輝き、その後塵を拝したが、打率.343、40本塁打、109打点と申し分ない結果。落合にも「日本で1年でも長くプレーしたい。ガムシャラにタイトルを狙って仮に獲っても、ムリが響いて次のシーズンで成績が落ちたらクビになってしまう」と語っていたという。

 陽気な性格ながら、とにかく短気。歯車も徐々に狂い始めていく。その翌86年に西武東尾修から死球を受けると、たちまちマウンドに突進して暴行。10万円の罰金と10日間の出場停止も、「処分は受けるが反省はしない。あんなコントロールのいい投手が(死球を)当てるなんて、おかしいだろう」と憮然としていた。このときは殴られた東尾よりもデービスに同情する声のほうが大きかった印象もある。だが、続く87年は91試合の出場のみ。そして88年6月7日、大麻不法所持で逮捕される。デービスは「友人からケガに効く薬といわれてもらった」と容疑を否認したが、近鉄は早々にデービスを解雇。その後釜として加入して、続く「16」を着けたのが、中日の二軍でくすぶっていたブライアントだった。

 一方で、デービスの前後は着けた期間が長い。デービスの退団で近鉄の「15」は投手の系譜に戻り、後継者となったのが山崎慎太郎。85年に入団して「39」を与えられると、88年に初の2ケタ13勝を挙げてブレーク、最後の最後まで優勝を争った近鉄の原動力となった右腕だ。

近鉄の初代も“二刀流”


近鉄では通算80勝をマークした山崎


 山崎は「15」1年目の89年には9勝とリーグ優勝に貢献して、94年から2年連続2ケタ勝利。98年にダイエーへ移籍するまで「15」を背負って、その9年間は系譜で最長タイだ。山崎の後は左腕の真木将樹が4年間。2002年には日本ハムで本塁打王2度、打点王1度のウィルソンが継承、ふたたび助っ人の背番号に戻ったが、これがウィルソンの日本ラストイヤーに。続いて巨人から来た左腕の小野仁も1年で引退。そして、横浜(現在のDeNA)から移籍してきた右腕の福盛和男が近鉄で最後の「15」となり、そのまま楽天で最初の「15」となっている。

 山崎と最長タイに並ぶのはデービスの前任者だった福井保夫だ。ドラフト1位で1975年に入団した右腕で、1年目からプロ初勝利を挙げたものの、その後は登板機会に恵まれず、84年に移籍した広島で引退している。福井からさかのぼっていくと、岡田光雄が6年、加藤英治が2年、磯田毅が3年という“投手リレー”。その前の6年間は西鉄(現在の西武)で55年にノーヒットノーランを含む21勝を挙げた右腕の大津守が着けていた。その前の3年間は岡本教平で、社会人と社会人の間で近鉄に在籍した右腕だ。

 そして初代、近鉄がプロ野球に参加した50年から54年まで「15」だったのが五井孝蔵。近鉄だけでなく「15」の選手らしい存在で、50年は投手としてチーム3位の8勝、53年は正三塁手としてプレーして、最後は投手として引退している。

【近鉄】主な背番号15の選手
五井孝蔵(1950〜54)
大津守(1958〜63)
福井保夫(1975〜83)
デービス(1984〜88)
山崎慎太郎(1989〜97)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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