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松井秀喜とカブレラ 「全盛期の打撃」が凄かった長距離砲はどっち?

 

ともに長距離砲として名を馳せたカブレラ(左)、松井


「平成史上最強の長距離砲」で思い浮かぶ選手は誰だろうか。清原和博金本知憲中村紀洋小久保裕紀アレックス・ラミレスタフィ・ローズ松中信彦小笠原道大とさまざまな強打者が思い浮かぶが、全盛期の打撃は「抑える術が見当たらない」と他球団の投手たちが嘆いたのが、日米通算507本塁打を放った松井秀喜、プロ野球史上唯一の3年間で150本塁打をマークしたアレックス・カブレラだ。共に長距離砲として活躍した両選手のパワー、打撃技術はプロの中でも超越した世界の領域だった。

打席で醸し出すオーラ


巨人時代の松井秀喜


・松井秀喜(巨人、ヤンキース、エンゼルス、アスレチックス、レイズ)
NPB通算成績1268試合出場、打率.304、332本塁打、889打点
MLB通算成績1236試合出場、打率.282、175本塁打、760打点

 2009年にヤンキースでワールド・シリーズ優勝を経験し、アジア人初のワールド・シリーズMVPを受賞したが、松井が長距離砲としてインパクトが強いのは巨人時代だろう。巨人での在籍10年間で332本塁打を放ったが、高卒で10シーズンでの本塁打数は、王貞治の356本に次ぐ歴代2位の記録だ。首位打者1回、本塁打王、打点王を3回獲得した「ゴジラ」が特に強烈だったのは巨人最終年の02年だ。球宴前までは76試合で18本塁打だったが、後半戦は64試合で32本塁打と驚異的なペースで打ち続け、自己最多の50本塁打をマーク。首位打者は福留孝介(現中日)に譲ったが、打率334、50本塁打、107打点で本塁打王、打点王の2冠に輝いた。

 松井と対戦した投手たちも週刊ベースボールのインタビューでそのすごさを証言する。松井にプロ初アーチを献上したヤクルト高津臣吾(現ヤクルト監督)は「打席に立ったときのオーラがほかの選手とはまったく違った。マウンドに立ち対戦したからこそ感じられたすごみがあった」と語り、同期入団のヤクルト・伊藤智仁はパワーと確実性は誰にも負けない。プロ1号アーチは高津さんから、と言われているが、実はその前に僕が二軍で献上しています」と明かす。横浜(現DeNA)時代に対戦したヤクルト・内川聖一も「とにかくスイングが速い。ベンチまでスイングの音が聞こえたこともあった。そんな経験は初めてで、今でも忘れられない」と語っている。唯一無二のホームランアーティストだった。

他を圧倒する驚異的な飛距離


西武時代のカブレラ


・アレックス・カブレラ(西武、オリックスソフトバンク
NPB通算1239試合出場、打率.303、357本塁打、949打点

 衝撃度で言えば、来日した外国人の中でNo.1だろう。メジャーでは通算5本塁打と実績に乏しかったが、来日1年目の2001年に64試合で30本塁打到達とプロ野球タイ記録を作るなど、NPB1年目の最多記録となる49本塁打をマーク。打席で構える際に背中を後方に反る独特の構えから豪快なアッパースイングで果てしなく飛ばす。5月26日のダイエー戦(西武ドーム)で若田部健一のフォークボールをすくい上げた打球は、西武ドーム左翼側の屋根に直撃して場外の通路へ落ちる170メートル弾。8月12日の近鉄戦(大阪ドーム)でも左翼席後方の壁にぶち当てる特大の一発を放ち、「壁に当たらなければ190メートルは行っているよ」と涼しい表情を浮かべた。

 他球団が徹底マークした来日2年目の02年もどこ吹く風だった。打率.336、55本塁打、115打点と当時の本塁打日本タイ記録を樹立。このシーズンは高めにストライクゾーンが広がる新ストライクゾーンの導入もあり、リーグ総本塁打数が前年から150本以上減少するなど投高打低だったが、カブレラには関係なかった。3年目も50本塁打を放ち、史上初の3年間で150本塁打以上を放った。

 対戦経験のある岸田護(オリックス二軍投手コーチ)は週刊ベースボールのインタビューで、カブレラについてこう語っている。「同じチームになったこともありましたけど、カブレラの腕の太さはえぐいですよ。打撃練習をすると、ほとんどのボールをスタンドに放り込んでいましたし、打球の速度が常人じゃありませんでした。ピッチャー返しが来たら絶対に逃げられないと思いますね。どんな球でもフルスイングしてくるので、投げる側からしたら一番イヤな打者です。三振が多いイメージがありますが、変化球にも対応する技術を持っているので、簡単に抑えるのが難しい。バットに当たったらホームランみたいな感じですね。えぐいというか、もう、恐怖です」。異次元のスラッガー。それがカブレラだった。

写真=BBM
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