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大学野球の醍醐味「4年生エースの直接対決」 NPBを目指す早大・徳山壮磨、法大・三浦銀二に意味のあった一戦

 

旧知の仲の投げ合い


早大・徳山壮磨は法大1回戦で4安打完封勝利(2対0)。同じ4年生である法大の主将・三浦銀二との投手戦を制している


 東京六大学野球春季リーグ戦は政府からの緊急事態宣言の発出を受けて、前週(第3週2日目)の4月25日から無観客開催(第4週=5月1、2日、第5週=同8、9日を含む)となっている。

 5月1日の法大−早大1回戦。法大・三浦銀二(4年・福岡大大濠高)と早大・徳山壮磨(4年・大阪桐蔭高)の両エースが先発マウンドに上がった。2人は1年春からリーグ戦で登板しているが、先発で投げ合うのは初めてである。

 お互い意識しないはずがない。旧知の仲であるからだ。徳山は2017年春のセンバツを制し、三浦は8強進出。侍ジャパンU-18代表のチームメートで、同年9月に行われたU-18W杯(カナダ)では3位。徳山は2勝を挙げて最高勝率投手、三浦はカナダとの3位決定戦で7回無失点と、銅メダル獲得に貢献している。

 最終学年となり、徳山は早大のエース番号「11」を着け、三浦はキャプテンナンバー「10」を背負う。法大で投手が主将を務めるのは29年ぶりで、開幕カードの慶大1回戦では62年ぶりの「ノーヒット・ワンラン」を達成。立大1回戦では1点リードの9回裏に追いつかれ、引き分けた。法大は2カードを終えて1勝2敗1分。一方、徳山は東大1回戦を7回3失点で勝利投手となるも、立大1回戦では3回6失点で敗戦投手。早大は同2回戦も落とし、1勝2敗1分。今春は2試合総当たりの計10試合のポイント制であり、両校とも1敗も許されない厳しい状況で、この日を迎えていた。

 主戦投手としての意地と意地が激突し、大方の予想とおり、白熱した投手戦となった。東京六大学リーグはDH制ではなく、投手も打席に立つ。2人の投手と打者としての対決も力が入っており、見ごたえ十分だった。

 5回まで双方無得点。早大は6回裏、一死三塁から三番・蛭間拓哉(3年・浦和学院高)の中前打で先制する。8回裏にも四番・岩本久重(4年・大阪桐蔭高)の適時二塁打で追加点。徳山はこの2点を死守し、4安打完封(2対0)している。三浦も相手打線を5安打に抑えたが、打線の援護に恵まれなかった。ただ、失点しても、表情を一つ変えることなく、最後までマウンドに立ち、エースの仕事をまっとうしていた。

お互い「意識していない」と言うが……


法大の主将・三浦も5安打2失点と粘ったが、打線の援護がなかった


 試合後、まず、敗退した法大の取材。あえて聞いてみた。初の先発対決で感じるものはあったのか――と。三浦は「同学年で同じ右投手。高校日本代表でも一緒でしたので意識はしますが、特別、徳山だからというのはないです」と淡々と語った。一方、徳山も「特に意識していないです。一人ひとりを打ち取ることだけを考えていました」と、目の前の打者に全神経を研ぎ澄ましていたという。

 しかし、選手と一緒に取材対応していた早大・小宮山悟監督は徳山のコメントを受けて、冗談交じりに「私はU-18時代を思い出していたのに……。何も感じないというのは……」と苦笑い。報道陣の前であり、逆に過剰反応してしまい、本音を言えなかったかもしれない。2人の気迫を見れば、ライバル視していたのは明らか。勝負師として、当然である。

 徳山は「早稲田の11なので、調子ではなくて、気持ちで抑えにいった結果」と、精神面の充実ぶりを語った。三浦も主将として特別な存在であり、開幕から3試合連続完投。投手出身で今春から指揮する法大・加藤重雄監督は全幅の信頼を口にしている。

「今シーズンは2点以上を取れていない(5月1日現在、5試合で6得点)いかんせん打線があまりにも……。苦しい戦いが続いている。監督として(三浦には)謝らないといけない。2勝目(リーグ戦通算10勝目)を、何とか勝たせてやりたい。ウチのキャプテンでエース。三浦がマウンドを降りた時点で、ウチは負けを覚悟しないといけない。三浦には、それに耐えるだけの実力を持っている」

 4年生エース同士の直接対決は、大学野球の醍醐味だ。両校とも部員100人を超える大所帯。母校、チームの顔として投げることは、心の成長につながる。この日は「無観客開催」であるからこそ、常日ごろから応援してもらっている関係者に良い報告をしたい。勝ちたいという思いは、さらに過熱していたはずだ。

 2人とも大学卒業後の進路は「プロ志望」。NPBスカウトは技術だけでなく「チームを背負う覚悟」も、評価対象としていると言われる。勝者と敗者で分かれたが、両投手にとって意味のある一戦になったに違いない。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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