3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 1リーグ制に動き出すのか?
今回は『1972年11月6日号』。定価は100円。
日本シリーズの真っ只中だが、パ・リーグが大きく揺れていた。
西鉄ライオンズ、東映フライヤーズの身売り問題だ。
水面下で2球団の買い手探しに動いていたのが、
ロッテの中村長芳オーナー。交渉先はペプシコーラジャパンとパイオニアだったという。
まず、西鉄をペプシにと思っていたようだが、ラッセル・ムーニー社長は九州という遠隔の地、20億とも言われた買収額に難色を示し、「本社の確認を取る」という返事だけ。こちらは、もはや絶望的と言われていた。
すると、中村は、元
巨人広報部長の坂本幸夫が営業部長をしていたパイオニアに近づく。
大の野球ファンである石橋社長は「プロ野球経営となると大変難しいと聞いていますし、パイオニアがプロ球団を持つことで、どんなメリットがあるか」と否定的な発言はしていたが、密かに20億の獲得資金を準備していたという。
しかし、話が飛んだのは、皮肉にも東映の身売り話からだった。
「パでは一番経営内容がいいと言われる東映が身売りとなるとパはどうなるのか。へたに西鉄を買収してもリーグが崩壊するようなことになれば、バカを見るのはうちだけだ」(パイオニア役員)
東映の身売りが表面化したのは、10月16日。東映の株式を持つ東急・五島昇社長が中村オーナーとの会談で球団株をすべて譲渡することを決めてからだ。以後、東映・大川オーナーは取材から逃げ回っていた。
一方、西鉄は19日、木本社長は「来季は経営の意思はない」と発言していた。
噂では東映は買い手がなければ、もう1年は継続するが、西鉄はなければ解散と言われる。
パ・リーグはまさに風前の灯火となっていた。
では、また月曜に。
<次回に続く>
写真=BBM