5月8日に来日デビューも……
阪神が開幕から順調に首位をひた走っている。もともと投手力に定評はあったが、迫力に欠ける打線が課題だった。昨年はリーグ優勝した
巨人に7.5ゲーム差をつけられて2位に終わったが、チーム総得点はリーグ4位の494点。広い甲子園を本拠地にしているため、リーグ4位タイの110本塁打は致し方ない部分もあるが、つながりを欠いた拙攻が目立った。
だが、今季は違う。2人の新戦力の加入が大きい。ドラフト1位・
佐藤輝明はリーグトップタイの10本塁打。4月9日の
DeNA戦で横浜スタジアムの右中間に場外アーチを放つと、14日の
広島戦(甲子園)で
森下暢仁のカーブに泳ぎながらも右中間に運ぶ甲子園初アーチと規格外のパワーを発揮。長打力だけではない。1割台に低迷していた打率も5月12日現在で.267まで上昇。内角高めの直球と低めの変化球に対応できるようになり、ヒットゾーンが広がった。
大山悠輔が背中の張りで抹消されると、7日のDeNA戦(横浜)から四番に。いきなり10号右越えソロを放つなどレギュラーとして外せない選手になった。
ドラフト6位で入団した
中野拓夢の貢献度も高い。俊足巧打でパンチ力を秘め、打率3割3分を超えるハイアベレージをキープ。
木浪聖也を押しのけて正遊撃手をつかんでいる。打線に切れ目がなくなり、どこからでも得点が奪えるようになった。
即戦力のルーキーコンビの活躍はほかの選手の刺激になっている。佐藤に押しのけられた形で開幕から代打要員だった
糸井嘉男は、「六番・右翼」で今季初のスタメン起用された7日のDeNA戦(横浜)で左腕・エスコバーの直球を強振して左中間に今季初アーチ。9日の同戦も右中間に勝ち越しの2号2ランを放つなどマルチ安打の活躍で、レギュラー奪取に向けて猛アピールしている。
マルテ、
サンズもクリーンアップとして存在感を示している。ここで頭を悩ませるのが新外国人のロハス・ジュニアの起用法だ。昨季韓国リーグで打率.349、192安打、47本塁打、135打点の好成績で本塁打王、打点王の打撃2冠、シーズンMVPに輝いたスイッチヒッターは打線の中心選手として期待されたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限で開幕後に来日。ファームで実戦を重ねていたが、一軍のマルテ、サンズが好調を維持しているためなかなか出番がない。今月8日のDeNA戦(横浜)で来日デビューを飾ったが4打数無安打2三振に終わり、翌9日に外国人枠の関係でベンチ入りメンバーから外れた。11日の
中日戦(甲子園)では「六番・右翼」でスタメンも4打数無安打とまだ結果が出ていない。
岡田彰布氏の見立ては?
元阪神監督で野球評論家の
岡田彰布氏は週刊ベースボールのコラムで、外国人選手の起用法に言及している。
「特に外国人選手の働きは特筆ものよ。マルテとサンズのことやけど、これほどの活躍は予想できなかった。それは球団もそう考えていたはず。だからロハス・ジュニアという新外国人を補強したわけよ。ところが、ここまで2人が打ちまくっているのだから、悩ましい問題が発生する。ようやく出場の準備を整えたロハス・ジュニアをどう扱うのか。ここが今後のポイントになる。結果が出ていないと、簡単に答えは出る。そう、そんなときは動けばいいわけよ。新外国人を使えばいい。でも、結果が出ている今はどうする? 新外国人に対する期待感もある。早く見てみたい……という声も大きい。監督の決断が難しいが、いいときは動かないほうがいい。ヘタに動いて、チームのいい流れが、逆流するってことはよくある話です。矢野監督がどんな判断をするのか。これは当面のポイントになる……と、オレはニラんでいる」
長いペナントレースでロハス・ジュニアが必要になる時期は必ず来るだろう。そのときに能力を最大限に発揮できるか。16年ぶりのリーグ優勝を狙う上で、外国人選手の起用法がカギを握りそうだ。
写真=BBM