3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 百年の計とは3年?
今回は『1972年11月27日号』。定価は100円。
11月2日、阪神・村山実兼任監督の引退、退団決定会見が行われた。
「長い間お世話になりました。まず真っ先に、この席を借りてお礼を言いたい」
村山の顔には笑顔があった。
「今はさばさばした気持ちです。気分爽快と言ってもいいでしょう」
もちろん、これが強がりであることは誰もが分かっていた。
ミスタータイガースとも言われた大エース。59年阪神に入団し、通算222勝をマーク。
巨人戦に燃え、特に
長嶋茂雄とは幾多の名勝負を繰り広げた。
70年に兼任監督に就任したが、この72年は開幕直後から成績不振もあって
金田正泰コーチに指揮権を委ね、選手に専念してきた。
しかし、選手としては4勝。チームは金田代行のもとで優勝争いをし、いつまでたっても指揮権を戻す話にならなかった。半ば、梯子を外された形で引退、退団を決意せざるを得なかったとも言える。
監督就任の際、球団幹部からの、こんな言葉があったという。
「チーム百年の計に立って、あえて若い村山を監督にして育てていく」
記事はこう結んでいた。
「百年が三年とは村山自身もファンも知らなかった」
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM