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背番号物語

【背番号物語】DeNA「#6」“不屈の苦労人”高木由一と“期待の若手”森敬斗。「そんなに差はないんですよ、プロなんだから」

 

6年目の「6」


DeNAの系譜の中で最長の11年間、背番号「6」を着けた高木由一


 20世紀には内野の名バイプレーヤーたちが着けることが多かったが、ロッテ落合博満が3度の三冠王に輝いたあたりから存在感を強くして、21世紀には打線のメーンを張る内野手たちが並ぶようになった「6」。この傾向はDeNAも同様だが、まだ過渡期にあるともいえそうだ。

 この2021年はドラフト1位で入団して2年目を迎える内野手の森敬斗が背負っているDeNAの「6」。21世紀に入ってドラフト1位で入団した若手がリレーするようになり、前任の白崎浩之は入団した13年は「29」だったが、2年目に遊撃手として台頭、16年から18年シーズン途中にオリックスへ移籍するまで背負い続けた。その前の啓二朗(松本啓二朗)はドラフト1位で入団した09年から「6」を与えられた外野手で、1年目の開幕戦からリードオフマンとして先発出場を果たしたが、7年目に「61」に。現時点では、まだ「6」で主役の座に就いた選手は登場していないといえるだろう。

 最長の11年間「6」を背負ったのが一塁と外野を守った高木由一。好一、嘉一と改名の多い選手だったが、それ以上に背番号の変更は多く、4番目の背番号が「6」だった。軟式でプレーしていた相模原市役所からテストを受けてドラフト外で1972年に入団するも、「1年間ずっとバットスイングをしても全然、認めてもらえなかった。悔しかったですね。契約金を何千万ともらっている選手は苦労しなくてもチャンスが与えられる。それほど差はないんですよ、プロなんだから」と振り返る1年目の背番号は「81」。そこから「35」、「63」を2年ずつ着け、「6」を背負ったのは6年目の77年だった。

 この77年に初めて規定打席に到達。チームが川崎から横浜へ移転した翌78年にキャリアハイの23本塁打、80打点、打率.326をマークして、80年には58試合で四番打者を務めた。87年限りで現役を引退してからも長く指導者としてチームを支え、98年に38年ぶりリーグ優勝、日本一へ向けて打ちまくった“マシンガン打線”の生みの親ともいわれている。

 松本の前に1年だけ助っ人で外野手のビグビーが着けたこともあったが、高木の前に4年間「6」だったのが華麗な三塁守備で魅せた助っ人のボイヤー。その前の「6」も高木と同様、背番号を渡り歩いた外野手の重松省三だ。1年目の62年は「65」だったが、翌63年には「32」となり、その翌64年には初めて規定打席に到達して自己最多の15本塁打。「6」となったのは、やはり6年目の67年だった。重松は「6」の期間も6年で、73年からは「9」となり、75年までプレー。その後は高木と同様、長く指導者、フロントとしてチームを支え続けている。

仁から仁へ


中根“仁”から「6」を継承した多村“仁”


 高木の後継者となったのも「32」から6年目に「6」となった内野手の高橋雅裕(眞裕)。高橋はホエールズ最後、ベイスターズ最初の「6」でもあり、系譜では異色の韋駄天タイプだった。高橋のロッテ移籍で1年間は欠番となり、98年に後継者となったのが近鉄から来た外野手の中根仁。移籍1年目から投手の左右で佐伯貴弘との併用ながら“マシンガン打線”の六番打者としてリーグ優勝、日本一に貢献した。

 中根は権藤博監督に「多村が一軍に出てきたら自分は引退だと思っています」と言っていたというが、2003年オフに中根が引退し、翌04年に「6」を託されたのが、その多村仁(仁志)。このとき多村はプロ10年目で、初めて規定打席に到達したが、いきなり40本塁打を放つなど真価を発揮して、07年に移籍したソフトバンクでも「6」を背負い続けた。DeNAとなったチームへ復帰した13年は原点の「52」、翌14年からは「8」でプレーして、15年オフに育成選手として中日へ移籍も、1年で引退している。

現在は高卒2年目の森敬斗の背中に「6」はある


 一方、重松の前も1年間、南海(現在のソフトバンク)から来た助っ人で右腕のスタンカが着けていたが、その前の4年間「6」だったのが中日から来た長距離砲の森徹で、現役の森敬斗は“2人目の森”。その「6」は期待の表れだが、不屈の苦労人も期待の若手も「そんなに差はない」のかもしれない。スター候補にも不屈の魂はエネルギーになるはずだ。

【DeNA】主な背番号6の選手
重松省三(1967〜72)
高木由一(1977〜87)
高橋雅裕(1988〜96)
中根仁(1998〜2003)
森敬斗(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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