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背番号物語

【背番号物語】DeNA「#27」最強の巨人キラー・平松政次のナンバーは王貞治を苦手とする系譜だった?

 

「27」で通算198勝


ホエールズのエースだった平松は「27」を背負った


 ドラフト1位で2019年に入団した上茶谷大河が背負うDeNAの「27」。チームの変遷もあり、大洋もホエールズも遠い昔のように思えるが、当時を知るファンにとっては、「27」といえば真っ先に平松政次を思い浮かべるはずだ。通算201勝はホエールズ時代、ベイスターズ時代を通してチーム最多。ホエールズは川崎から現在の横浜へ移転した1978年に「大洋ホエールズ」から「横浜大洋ホエールズ」となり、川崎から横浜にかけて、低迷するチームを支え続けたエースだった。

 まだ本拠地が川崎球場にあった67年のシーズン途中に入団した平松。最初の背番号は少年期からあこがれていた巨人長嶋茂雄と同じ「3」で、2年目の68年から「27」に。真価を発揮するようになったのは翌69年で、シュートを投げるようになってから。150キロ超のスピードのまま曲がる“カミソリシュート”は右打者にとって脅威となり、平松が燃えたこともあって、特に長嶋は25打席連続無安打と長く沈黙するなど苦しめられた。ただ、この“カミソリシュート”は諸刃の剣で、肩痛など故障が続いた平松は“ガラスのエース”とも。それでも球速とキレの落ちたシュートをフォームの調整でカバー、ひねって投げる新しいシュートと緩急で、横浜へ移転して2年目の79年には防御率2.39で最優秀防御率に輝いている。

 83年に念願の通算200勝に到達しながらも、翌84年の1年だけ現役を続けて引退。巨人戦では通算51勝47敗という巨人キラーで、通算勝利こそ国鉄の金田正一に続く2位ながら、平松が対戦したのはV9という空前絶後の黄金時代を謳歌していた時代の巨人が中心で、さらに白星が黒星を超えていることなどを考えれば、平松が最強の巨人キラーということもできそうだ。

 平松が背負う前の「27」にも好投手が並ぶ。大洋がプロ野球に参加した50年からは短期間リレーが続いたが、62年には佐々木吉郎が「27」に。ただ、プロ野球8人目の完全試合を達成したことでも知られる佐々木も、その快挙は「18」に変更してからのもの。「27」ラストイヤーとなった64年には巨人の王貞治にシーズン55号を献上。長嶋を得意としていた平松も対照的に王は苦手としており、王に苦しめられるのも「27」の隠れた特徴かもしれない。佐々木は平松にとって日本石油の先輩でもあった。

 佐々木の前はハワイ出身で内野手のスタンレー橋本が1年だけ着けていたが、佐々木の後は60年に大毎(現在のロッテ)のエースとして日本シリーズで大洋と戦った左腕の小野正一が3年間。小野が中日へ移籍したことで「27」を背負ったのが平松だった。

期待の新人が背負う傾向も……


平松から背番号「27」を継承したドラフト1位・竹田光訓


 チームがDeNAとなってからは背番号に対する意識が変わってきたようにも見えるが、背番号に無頓着というか、淡白なのがチームの伝統(?)。平松の「27」も、無視こそされていないが特別視されているわけでもない、というような印象がある。平松が引退した翌85年には早くもドラフト1位で入団した竹田光訓が継承したが、89年には韓国プロ野球へ。2年で大洋へ復帰したものの、新たな背番号は「42」だった。

 89年に後継者となったのはドラフト6位で入団した田辺学。平松とは違って左腕だったが、大洋ラストイヤーの92年に4勝ながら規定投球回に到達するなど、低迷期を支えた平松の面影も見えた。翌93年にチームは横浜ベイスターズとなり、97年いっぱいで田辺は引退。「27」はチーム38年ぶりリーグ優勝、日本一の翌98年は欠番で、優勝とは無縁だった平松と同様、「27」が頂点の舞台で輝くことはなかった。

 欠番は2年にわたり、ロッテから来た右腕の小宮山悟が継承するも2年で海を渡って、1年の欠番。その後も新人で右腕の土居龍太郎(龍太郎)、龍太郎とのトレードでロッテから来た左腕の山北茂利日本ハムから来て2年目を迎える右腕の江尻慎太郎阪神から来た右腕の久保康友らは複数年だったが、右腕のブーチェック、外野手のモーガンら助っ人は1年ずつと、入れ替わりが激しい時期が長かった。1年の欠番を挟んで後継者となったのが上茶谷。平松の独壇場ともいえる「27」に、新たな物語を紡ぎたい。

【DeNA】主な背番号27の選手
佐々木吉郎(1962〜64)
平松政次(1968〜84)
田辺学(1989〜97)
久保康友(2014〜17)
上茶谷大河(2019〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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