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救援で抜群の安定感 巨人・野上亮磨に期待された「第2の大竹寛」の役割だったが…

 

アキレス腱断裂からの復活


今季、リリーフに活路を見いだしていた野上


 巨人は救援陣の台所事情が苦しい。守護神・デラロサが4月中旬に米国市民権取得手続きのために帰国。昨オフにDeNAからFA移籍した井納翔一は先発から救援に配置転換されたが失点を重ねて信頼を得られていない。最速164キロ右腕・ビエイラは制球難に苦しんでいる。桜井俊貴も不安定な投球でチャンスを手放した。ドラフト1位右腕・平内龍太も3試合の救援登板で防御率14.40。5月16日の首位・阪神戦(東京ドーム)で同点の4回から2番手で救援登板したが、サンズに四球を出した後に陽川尚将に勝ち越し2ラン。近本光司にも中越え適時二塁打を浴びるなど4失点と1回持たずにマウンドを下りて登録抹消された。
 
 その中で、救世主としての活躍を見せていたのが野上亮磨だ。2017年オフに西武からFA移籍したが、18年は4勝と先発で結果を残せず。救援に配置転換された19年も1勝1セーブ。10月のフェニックス・リーグの試合中左アキレス腱断裂の大ケガを負い、昨年は一軍登板なしに終わった。崖っぷちに追い込まれた今季は意地を見せている。4月2日のヤクルト戦(東京ドーム)で先発登板すると6回4安打2失点の粘投。味方の援護に恵まれず今季初黒星を喫したが、チーム事情で救援に配置転換された後も安定した投球を続けていた。

 野上の強みはロングリリーフができることだ。4月27日のヤクルト戦(神宮)は4回表まで6対6と乱打戦の展開で4回裏から登板すると、3回無失点の快投で流れを引き寄せて勝利に大きく貢献した。5月7日のヤクルト戦(東京ドーム)はエース・菅野智之が4回を投げ終えると右ヒジの違和感で緊急降板する事態で5回から急遽登板。3回1失点と踏ん張った。

 140キロ前半の直球には球速以上のキレがあり、決め球のスライダー、チェンジアップも質が高く、制球がまとまっている。四球で崩れる心配がないため首脳陣も安心感があっただろう。野上には良いお手本がいる。38歳のベテラン・大竹寛だ。その野球人生は野上に重なる部分がある。

限界説を払拭した大竹


中継ぎとして19、20年の連覇に貢献した大竹


 大竹は広島から巨人にFA移籍初年度の14年は9勝を挙げてリーグ優勝に貢献したが、15年は3勝。16年は6勝、17年は4勝と不本意なシーズンが続く。18年はわずか2試合の登板で1勝のみに終わり、限界がささやかれる。しかし、原監督の決断で長年務めていた先発から救援に配置転換され、再び輝きを取り戻す。19年は32試合登板で4勝0敗8ホールド、防御率2.77。11月のプレミア12で救援要員として侍ジャパンの世界一に貢献した。昨年も29試合登板で1勝2敗16ホールド、防御率2.59とリーグ連覇の原動力になった。

 野上は大竹の姿を見て思うところがあったのではないだろうか。5月15日の阪神戦(東京ドーム)で2点リードの9回二死満塁のピンチの場面で登板すると、マルテを遊ゴロに仕留めて19年4月27日のDeNA戦(東京ドーム)以来、749日ぶりの通算4セーブ目をマークした。試合後のお立ち台では「マウンドに立てば楽しんで投げることだけを考えて、1試合1試合、1球1球、楽しんで野球をやりたいと思います」と言葉に思いを込めた。大ケガを乗り越えてたどりついたマウンド。野球ができる喜びを胸に右腕を振り続けいたが……。

 5月18日の広島戦(東京ドーム)、1点リードの7回から2番手で登板したが、右肩に異変を訴えて、わずか4球を投げたのみで緊急降板。翌日に登録抹消された。本人は悔しい思い出いっぱいだろうが、早期の復活が待たれる。

写真=BBM
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