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早川隆久にも可能性が! 沢村賞に選出されたルーキーは過去何人いる?

 

5月16日のオリックス戦(京セラドーム)でハーラートップの5勝目を挙げた早川


 今季は野手ルーキーの活躍が目立っているが、投手でも楽天早川隆久日本ハム伊藤大海など好調なルーキーがいる。特に早川は5月19日現在、リーグトップの5勝と奮闘しており、投手タイトル獲得の可能性もある存在。時期尚早ではあるが、沢村賞も期待したいところだ。では、過去に「沢村賞に選出された1年目ルーキー」は何人いるのだろうか?

最初の受賞ルーキーは村山実


沢村栄治賞」、通称「沢村賞」は1947年に創設された完投型先発投手に贈られる個人賞だ。1950年からはセ・リーグの選手のみを表彰対象としていたが、1989年に両リーグの選手が対象に変更されている。

 これまでに52人の投手が沢村賞に選出されたが、このうち入団1年目で沢村賞という快挙を成し遂げたのはわずか6人しかいない。

新人時代の阪神村山実


 ルーキーながら沢村賞を獲得した最初の選手が1959年の村山実(大阪)だ。体全体を大きく使って投げる、闘志むき出しの「ザトペック投法」が特徴の村山は、4月14日の国鉄戦でプロ初先発。この試合は球界の大エース・金田正一と投げ合うことになったが、見事に相手打線を2安打に抑え、金田相手に完封で初勝利を記録した。この活躍がきっかけで先発の一角として起用されるようになった村山は、シーズンを通して1年目とは思えない投球を披露。最終的に18勝10敗、防御率1.19(リーグ1位)という新人離れした数字を残し、沢村賞に選出された。だが、新人王は新人最多となる31本塁打を記録した桑田武(大洋)が獲得。1年目での沢村賞選手で新人王を逃したのは村山ただ一人だ。

 新人による沢村賞という快挙が起こった翌年、再び球界にとんでもない新人投手が現れる。それが巨人堀本律雄だ。立大、日本通運で活躍し、日本代表でも目立つ存在だった堀本は、巨人の主力投手が離脱したこともあり、1年目から先発ローテーションの柱としてプレー。とにかくタフに投げ続け、なんとリーグ最多の29勝を挙げる活躍を見せた。防御率も2.00と優秀で、最多勝のほか、新人王と沢村賞にも選出した。しかし、翌1961年は前年より登板数も下がり、11勝12敗と成績が下降。1963年に大毎に移籍して15勝を挙げるも、翌年は再び不振に陥り、プロ6年目の1965年シーズンに引退した。

 1年目の無理がたたった選手として有名なのが「権藤、権藤、雨、権藤、雨、雨、権藤、雨、権藤」という名フレーズまで生まれた中日権藤博だ。実は権藤も1年目ながら沢村賞を獲得した選手。オープン戦で好投した権藤は、新人ながら投手陣の軸として起用され、なんと先発44試合を含む69試合に登板。この年は全130試合だったため、権藤は半分以上の試合でマウンドに立ったことになる。連投だらけの異常な起用にも関わらず、権藤は好投を続け、最終的に35勝19敗、防御率1.70というとんでもない記録を残した。この年の投球回数429回1/3は2リーグ制後の最長記録。勝率以外、すべての項目でリーグトップだった権藤は、問答無用で沢村賞にも選出。しかし、1年目の酷使が影響し、5年目の65年に野手転向。68年に投手に復帰したが、9試合の登板で1勝1敗、防御率10.80と復活できなかった。

野茂や上原も後に新人ながら沢村賞投手に


新人時代の巨人・堀内恒夫


 4人目の新人沢村賞投手は、1966年の巨人・堀内恒夫だ。甲府商高ではエースだったものの、全国的に目立つ存在ではなかった。それでも才能を高く買っていた巨人スカウト・沢田幸夫の猛プッシュによってドラフト1位で巨人に入団。高卒1年目ながら開幕前に一軍昇格を果たすと、4月14日の中日戦で初先発初勝利を記録した。その後は二軍降格を経験するも、すぐさま一軍に戻って先発ローテーションに定着。当時の新人記録である13連勝を含む16勝(2敗)を挙げた。最多勝とはならなかったが、最優秀防御率(1.39)、最高勝率(.889)のタイトルを獲得し、新人王と沢村賞にも選出。高卒ルーキーが沢村賞に選出されたのはNPB史上堀内のみ。後に平成の怪物と称される松坂大輔も1年目から活躍を見せたが、沢村賞は獲得できていない。

新人時代の近鉄・野茂英雄


 1990年には近鉄の野茂英雄が1年目で沢村賞に選出されている。アマチュアNo.1投手であった野茂は、ドラフトで史上最多となる8球団が指名。抽選の結果、近鉄が交渉権を獲得した。NPB史上でもトップクラスの評価を受けた野茂だが、序盤はなかなか勝利がつかないもどかしい試合が続く。しかし、4月29日のオリックス戦で17奪三振を記録して初勝利を記録すると、その後も快進撃を続け、終わってみれば21完投で18勝を挙げ、勝率、奪三振、防御率もリーグ1位という、期待に違わぬ成績を残した。この活躍が評価され、新人王、沢村賞のみならずリーグMVPも獲得。新人王、沢村賞、MVPを同時に獲得した選手は現在のところ野茂ただ一人だ。また、パ・リーグの選手が沢村賞に選ばれたのも野茂が最初となる。

新人時代の巨人・上原浩治


 6人目は1999年の沢村賞を獲得した巨人・上原浩治だ。高校時代は無名だったが、大阪体育大ではエースに成長し、日本代表でも活躍。怪物高校生の松坂大輔と並ぶドラフトの注目株となった。本人はメジャーに挑戦したいという考えがあり、メジャーのチームからも獲得打診があったものの、巨人ファンである父の説得もあり、逆指名して巨人に入団することになった。上原は1年目から先発ローテーションに定着し、堀内の新人記録を更新する15連勝をマークするなど活躍。最終的に20勝4敗で、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を達成し、新人王と沢村賞にも選ばれている。

 沢村賞に選出された1年目ルーキーを紹介した。1947年の制定以降、わずか6人とやはりそのハードルは高い。果たして今季は史上7人目の沢村賞ルーキーは誕生するのか。その筆頭候補である楽天・早川の今後の活躍を期待したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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