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背番号物語

【背番号物語】阪神「#15」初登板初勝利の西純矢が背負うナンバーの初代は不敗神話もあった右腕

 

負けない右腕、勝てない左腕?


背番号「15」を着ける20年ドラフト1位入団の西純矢は5月19日のヤクルト戦(甲子園)でプロ初勝利


 2021年の開幕から快進撃を続けている阪神に、また明るいニュースが飛び込んできた。ドラフト1位で20年に入団した西純矢の初登板初勝利だ。その背番号は「15」。期待の若虎が継承したナンバーは、阪神の創設1年目から応召を繰り返しながらもチームを支え続けた右腕を発祥とする由緒ある好投手の背番号だ。

阪神の初代背番号「15」の御園生崇男


 初代は1936年の創設メンバーで、まさに“猛虎”と呼ぶべき荒くれ者ぞろいのチームで異彩を放った右腕の御園生崇男だ。ロイド眼鏡をかけた知的な風貌で、物静かで温厚。異名は“銀行屋”だったが、これは絶妙なニックネームで、投球は正確無比、リズムも良く、ほとんど遊び球は使わない。しかも、なかなか負けないのが最大の特徴だった。春季と秋季の2シーズン制で行われた37年の秋は無傷の11連勝で、前後の3シーズンにまたがれば18連勝。1年の兵役から復帰した41年からは3年連続で負け越したものの、戦後の47年には開幕から13連勝もあった。リーグ最高勝率は3度。打撃も良く、選手が不足していた1年目は登板のない日には三番打者としても出場している。「15」は兵役と背番号が廃止されたシーズンだけは欠番で、2リーグ制となった50年は安居玉一が着け、御園生は「11」に変更となったが、翌51年に「15」へ戻してオフに現役を引退、58年までコーチとしても「15」を背負い続けている。

 だが、2年の空席を挟んで61年に後継者となった西山和良は阪神6年目の外野手で、西山が東京(現在のロッテ)へ移籍すると、助っ人で内野手のベルトイアが継承したが、まったく打てずにシーズン途中に退団。65年に投手の背中に戻って安定感を取り戻した。ただ、新たな後継者は御園生とは対照的な記録を持つ左腕。大洋(現在のDeNA)から東映(現在の日本ハム)を経て移籍してきた権藤正利だ。3シーズンにまたがって18連勝という御園生の一方で、大洋の「18」だった権藤は3シーズンで28連敗のプロ野球記録。阪神へ来たのはプロ13年目だったが、「15」という背番号が良かったのか移籍3年目の67年には防御率1.40で最優秀防御率に輝いている。

 権藤は73年までプレーして引退、翌74年は欠番で、その翌75年に継承した右腕の谷村智啓が系譜で最初のドライチ投手となる。ただ、谷村が71年に入団して最初に着けたのは一般的にエースナンバーとされる「18」。74年シーズン途中に「谷村智博」から改名、オフに「18」を広島から移籍してきた安仁屋宗八に譲り、新たに背負ったのが「15」だった。そこから2年連続2ケタ勝利。だが、谷村が79年オフに阪急へ移籍してからは、阪神の「15」は再び安定感を欠くようになっていく。

低迷期を支えたのはドライチ左腕


阪神低迷期を支えた左腕・湯舟敏郎の背番号も「15」


 ドラフト2位で入団した80年に後継者となった右腕の赤松一朗は故障に泣き、3年目に「49」へと変更。その82年シーズン途中に南海(現在のソフトバンク)から復帰した右腕の上田次朗が閉幕まで着けて引退、1年の欠番を経て阪急から来たベテラン右腕の稲葉光雄が着けるもオフに引退。日本一イヤーの85年からは右腕の嶋田章弘が継承、ドラフト1位で入団して最初に「15」を着けた投手の第1号となるも、89年に「60」へと変更、翌90年には外野手に転向した。

 89年に後継者となった新人の鶴見信彦はドラフト2位で入団した内野手で、2年で巨人へ移籍。91年に新人の湯舟敏郎が後継者となり、みたび投手の背中に戻った「15」は、ようやく安定感を取り戻した。湯舟はドラフト1位で入団した左腕で、即戦力となって2ケタ勝利3度。低迷期の阪神を支え、2000年オフに近鉄へ移籍するまで10年間、「15」を背負い続けた。

 新人が継承する系譜が定着したのは21世紀。ただ、ドラフト1位で入団して01年から09年シーズン途中に西武へ移籍するまで背負った右腕の太陽(藤田太陽)が真価を発揮したのは新天地で。10年に継承した左腕の藤原正典はドラフト2位だったが、故障もあって伸び悩んみ、ドラフト1位で15年に後継者となった左腕の横山雄哉も故障に泣いた。21世紀で最初の欠番を挟んで継承したのが西だ。

【阪神】主な背番号15の選手
御園生崇男(1936〜39、41〜43、46〜49、51〜58)
権藤正利(1965〜73)
谷村智啓(1975〜79)
湯舟敏郎(1991〜2000)
西純矢(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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