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高校野球リポート

「強い関西を復活させたい」母校で指導する元ヤクルト・上田剛史氏。ブレない目標は「全国制覇」

 

高校時代に過ごした黄金期


昨季限りで現役を引退した上田剛史氏(元ヤクルト)は母校・関西高(岡山)で指導している


 月に5日ほど手伝うつもりでいたが、気づけば月半分、高校野球にどっぷり浸かっている。

「家族の理解もあって、岡山に来ています。でも、東京にいる間も、子どもたちのことが気になって仕方ないんです。教えたことが、試合で成果として出ると、自分のことのようにうれしい。高校野球の魅力を感じています」

 気持ち良さそうに汗を拭うのは、昨季限りで現役を引退した元ヤクルト・上田剛史氏(32歳)だ。今年2月、学生野球資格を回復し、母校・関西高(岡山)を指導している。

 春夏を通じて、県内最多である21回の甲子園出場を誇る伝統校だが、2014年夏を最後に甲子園から遠ざかっている。上田氏は同校で2年春(2005年)から3年夏(06年)まで4季連続甲子園。関西高は07年春のセンバツにも出場しており、3年間、黄金期を過ごした。

「甲子園は良いぞ!! 人生変わるぞ!! といくら口で説明していても、実際に行ってみないと、分からないと思うんです。例えばプロで一軍を経験したか、していないかの差と同じです。どういう取り組みをしたら良いのか、子どもたちと一緒にグラウンドに立ち、できる限りのことを伝えているつもりです」

 練習方法、ゲームへの準備、打席での考え方など、具体的に分かりやすく教える。野球の技術だけでなく、高校生としてあるべき姿、人としての生き方についても話している。

 今春の県大会後、コーチから監督に就任した同校OBの藤井裕氏は言う。上田氏とは高校時代、チームに帯同するトレーナーと選手の間柄。4季連続甲子園時もチームに帯同した関係性もあり、厚い信頼がある。

「これまでの経験を基に、野球の考え方、選手へのアドバイスにも、説得力があります。上田自身も動けますから、実際にプレーを見せることができ、プラスになっている。走ること、打つこと、投げること、打撃投手も買って出てくれます」(藤井監督)

 甲子園に出場するためには、何が必要か。上田氏は力を込めて言う。

「甲子園へ行きたい、と思う部員が何人いるか、にかかってきます。試合に出るのは9人。ベンチ入りできるのは20人。90人以上の部員が、同じ気持ちになることが大事。一番、難しいですが、何とか持っていきたいです」

ヤクルトで昨年までの14年間、外野手としてプレーした


 高校球児に寄り添い、心は熱くなる一方だ。

「関西に100パーセントの力を注いでいます。もう一度、強い関西を復活させたい。何とか、藤井監督の力になりたいと思います」

 当面のターゲットは7年ぶりとなる夏の甲子園出場。だが、その先には、悲願の「全国制覇」というブレない目標がある。キレッキレのプレーで、模範を示せる上田氏。現役時代と同様、第2の野球人生でもグラウンドを颯爽と動いて、教育現場を明るくしている。

文=岡本朋祐 写真=佐藤真一
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