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打球を追うとき、ボールをどう見ながら追いかけていけばいい?【後編】/元西武・平野謙に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.打球を追うとき、ボールをどう見ながら追いかけていけばいいのでしょうか。うちの子どもはほぼ定位置のフライでも後ろに転んでしまうことが多く、守備を嫌がっています。(愛知県・40歳)


西武時代の平野氏の外野守備


A.大事なのはボールがバットに当たる瞬間を観察した上でスタート前に間をつくり、落下位置を決めつけないこと

 長くなって申し訳ありませんが、もう少し走る軌道について考えてみましょう。3回にわたって解説してきたこのテーマの最終回です。以下は基本的に、自分がライトに入った場合で説明していきます。以前も話したことがありますが、ライト、レフトで苦労するのはライン際の打球だと思います。この場合、打球の性質としてファウルゾーンに切れていくことがほとんどです。例外があるとすれば、詰まった打球や無回転の打球ですが、センターほど無回転の打球は多くありませんし、詰まった打球が頭を越えることはほとんどありません。

 頭を越えるような打球は、ほとんどがしっかりスイングをし、芯近くに当たったときですから、それが右方向、しかもライン際に飛んだ場合は、ほぼ切れていきます。例外はもちろんあります。外国人選手がものすごいスイングをした際は、完全に詰まった打球がフェンス際までいくときはありますが、これも慣れたら判断できるようになります。大事なのは、ボールがバットに当たる瞬間を観察した上で、スタートを切る前に間をつくる、また、落下位置を決めつけないことは、常に基本となります。

 走り方の軌道としては、ライト線の打球ならそちらに体を向けた半身で追います。打球の性質上、ボールが外に逃げていくわけですから、打球方向から最初に判断した以上に遠くに行く可能性が高いと考え、落ちる位置が予測できたら、早めの判断で切れ込んでいくイメージでしょうか。つまり頭の中では、「あのあたりから切れていくはず」と予測しつつ、最初は打球方向に従って追っていき、切れ始めたら鋭い刃物で切り裂くようなイメージで入ってください。

 一方で右中間の打球もスライス(フック)系の可能性が高く、真っすぐいくことあるでしょうが、切れながら自分に近づいてくることのほうが多いと思います。切れていく打球の場合、真っすぐ追い掛けると、頭上を通過してしまう可能性も出てきます。打球が近づいてくるのを予測しつつ、ゆるい弧を描き、向かっていくように走っていくのがいいと思います。

 いろいろ話してきましたが、実は私自身、切れていく打球が難しいと思ったことはありません。もちろん簡単ではありませんが、守備が好きだったので、クセがある打球を研究したり捕球するのが楽しかったこともあります。何度も言いますが、外野守備は好きになれば、必ずうまくなると思います。

<「完」>

●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2021年5月3日号(4月21発売)より

写真=BBM
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