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【MLB】ヒット数は再び三振数を超えられるのか

 

現地時間5月9日現在のエンゼルス・大谷の安打数と三振数はほぼ同じ34と33だった。今後マイナーでプレートを約3センチ下げてスタートするが、それにより投手に有利になるのか、打者に有利になるのか楽しみだ(写真は大谷翔平



 今季レイズでプレーしていたときの筒香嘉智(ドジャース)は打てないと言われた。現地時間5月4日までで打率.167、13安打に対して27三振だった。打てていないのは確かだが、これは彼だけではない。MLBの4月の打率は.232、出塁率は.309。これは1968年の4月以来の低い数字だった。

 68年シーズンが打てな過ぎたため、翌69年からMLBはマウンドの高さを15インチ(38.1センチ)から10インチ(25.4センチ)に下げている。加えて4月のMLBの三振数は6924個で、安打数5832個よりも1092個も多かった。

 この差は史上最多で、その前の最多は19年9月の705個、19年4月の529個だった。18年5月までひと月の三振数が安打数より多いということはなかったが、このときに逆転、以後差は広がっている。ちなみに大谷翔平も5月9日まででは34安打33三振と三振は少なくない。それでも10本塁打などでOPSは.952とチームへの貢献度はとても高かった。

 筒香のOPSは.462であった。多少三振しても、ホームランを打ってOPSを上げて得点してくれれば良いというのが今のMLBの考え方。だからみんな打球角度を重視して打ち上げる。ゆえにフライアウトが増え単打は減る一方なのである。MLB機構では、このままでは娯楽=エンターテイメントとしての魅力に薄れ、なにか工夫をしないとというので、今季マイナー・リーグで行うシフト禁止などのさまざまな実験に加え、さらに思い切った実験を行うことに決めた。

 業務提携している独立リーグのアトランティック・リーグで、今季後半マウンドの投球板からホームプレートまで60フィート6インチ(18.44メートル)の距離を、1フィート(30.48センチ)後ろに下げ、61フィート6インチとする。打者が投球に対しリアクションする時間を増やしバットに当てやすくするためだ。

 計算によると95マイル(約152.8キロ)の直球が本塁に届くのに0.01秒から0.02秒長くかかるそうだ。後半戦は8月3日からで、8つのアトランティック・リーグの球場でマウンドをずらす。実に1893年以来という歴史的な実験である。ちなみに93年以前はというと、マウンドはなく、今より10フィート手前(約3メートル)の平坦な場所に投球ボックスが描かれ、そこから投げていた。あれから130年近くも経ち、投手は大きく強くなり、技術も飛躍的に上がった。変更を考えてもおかしくないのではということだ。

 果たして実験の結果はどうなるのか。狙い通りに打球は増えるのか。変化球は曲がり幅が大きくなり打ちにくくなるという意見もあるが、筆者は打者が見極めやすくなるからボールになる変化球に手を出さなくなると思う。さらに四球の数が増えてしまうはずだ。

 ちなみにマウンドの高さを低くしたとき、68年シーズン通算で.237だった打率は69年が.248、70年は.254と上がった。とはいえ69年にエクスパンションでMLBのチーム数が20から24に増え、投手のレベルも若干下がっていたとは思う。実験の結果が芳しく、ヒットが増え三振が減れば、MLBは来季以降の変更を真剣に検討していくのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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