原点回帰のワインドアップで
ワインドアップから力強い球を投げ込み、完全復活を印象付けているのが楽天・
則本昂大だ。
開幕から先発ローテーションで回り、6月6日現在、10試合登板で5勝2敗、防御率3.02。6月2日のヤクルト戦(神宮)では150キロを超える直球、140キロ台の高速フォーク、キレ味鋭いスライダー、緩急をつけるチェンジアップで三振の山を築いた。6回に
村上宗隆の痛烈な打球が右ヒザ付近を直撃して三塁ベンチに一度下がったが、続投を志願。
オスナを最速153キロの直球で空振り三振を奪った。6回3安打1失点10奪三振の快投で今季5勝目。則本昂は試合後に楽天の公式YouTubeで投球を振り返り、「早いカウントで追い込んだ結果が三振につながる。ストライク先行でいけているときは三振が増えている。(調子がいい)一つのバロメーターかなと思う」と手応えを口にした。
プロ1年目の2013年に15勝8敗、防御率3.34で新人王を獲得するなど同年から6年連続2ケタ勝利、最多奪三振のタイトルを5度獲得。
田中将大がヤンキースにFA移籍した後は楽天のエースの枠にとどまらず、球界を代表する右腕として活躍していたが、近年は精彩を欠いていた。19、20年は右ヒジの手術の影響や投球フォームに試行錯誤し、2年連続5勝止まり。セットポジションで悩みながら投げ、持ち味の躍動感が失われていた。
だが、今年は原点回帰で1年ぶりにワインドアップに戻した。
石井一久監督は「上半身と下半身のバランスが非常に良く、うまくキャンプを過ごしてくれた。則本が1年間戦う決意を、成績で見せてもらおうと思う」と期待を込めていたが、エース復権に向けて堂々たる投げっぷりで白星を積み重ねている。
高い三振奪取能力
則本昂は東京五輪への出場に意欲を示している。昨年までの投球だったら侍ジャパンに選出されるのは厳しかったが、今年のパフォーマンスなら十分に可能性があるだろう。
ソフトバンク・
千賀滉大が左足首の靱帯損傷で4月に戦線離脱。
巨人・
菅野智之も右ヒジの違和感を訴えて5月8日に今季2度目となる登録抹消と状態が万全でない。昨年10月に左肩のクリーニング手術を受けた
DeNA・
今永昇太は5月下旬に復帰したが、本調子にはもう少し時間を要する。
中日の左腕エース・
大野雄大も9試合登板で2勝4敗、防御率3.45とピリッとしない。先発の核として期待される投手たちが本来の状態ではない中、三振奪取能力が高く、好調を持続している則本昂は魅力的だ。
「安定感抜群の田中将大とともに、則本も侍ジャパンの有力候補になるでしょう。東京五輪の短期決戦は状態が上向いている投手を使ったほうがいい。もともと実績はある投手ですしね。国際試合では15年のプレミア12、17年のWBCと思うような投球ができず悔しい思いをしている。地元開催の東京五輪でリベンジしたい思いも強いと思います」(スポーツ紙デスク)
三振を積み重ねる度にマウンドで雄叫びを上げる表情には自信がみなぎっている。楽天を勝利に導く快投を続けることで、東京五輪選出の切符もつかみたい。
写真=BBM