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背番号物語

【背番号物語】西武「#25」管理野球で「落伍者」から「必殺仕事人」となった大田卓司。永久欠番の「24」を超えるパ記録も

 

西鉄の“斬り込み隊長”、西武の“仕事人”へ


西鉄、太平洋、クラウン、西武では背番号「25」を背負った大田


 西武が西鉄としてプロ野球へ参加したのは2リーグ分立の1950年。同じ九州は福岡を本拠とする西日本を吸収してライオンズとなったのが翌51年のことだ。以来、現在まで一貫してニックネームはライオンズだが、チーム名は変遷。西鉄、太平洋、クラウン、そして現在の西武となる。西鉄の最後は72年で、西武は埼玉は所沢へ移転した79年からだが、西鉄ラストイヤーに「25」となり、太平洋からクラウン、そして西武と、すべてのライオンズで背負い続けたのが大田卓司だ。

 大田はドラフト9位で69年に入団。9位というと下位に感じるが、このとき西鉄は16位まで指名しており、同期の1位は、やはり全ライオンズで「21」を背負い続けた東尾修だった。ただ、1年目から「21」だった東尾の一方で、大田の背番号は「44」。徐々に出場機会を増やして、4年目に「25」へと変更、初の2ケタ12本塁打を放つなど期待に応える。だが、幾多の故障でシーズンを通して活躍できず、初めて出場100試合を超えたのが太平洋ラストイヤーの76年。主に指名打者として23本塁打を放ち、身長170センチとプロ野球選手としては小柄だったことから“小さなヒーロー”ともいわれて、キャリア唯一のベストナインにも選ばれている。

 ただ、その後も大田には故障が続いて、次にシーズン100試合を超えたのは西武3年目となる81年だった。翌82年に就任した広岡達朗監督の“管理野球”で当初は「落伍者」呼ばわりされたものの、ここから本領を発揮。この82年はパ・リーグの前後期制ラストイヤーで、大田は5月の月間MVPとなる活躍で前期の優勝に貢献すると、日本ハムとのプレーオフでは第1戦、第2戦と続けて満塁の場面で代打として決勝の適時打を放って、西武を初のリーグ制覇に導く。中日との日本シリーズでも打率.417、2本塁打、6打点の大爆発で優秀選手賞。翌83年の巨人との日本シリーズでも打率.429の安定感でMVPに輝き、2年連続で日本一の起爆剤となった。大舞台での卓越した勝負強さから異名は“必殺仕事人”。86年オフにユニフォームを脱いだが、その「25」を背負った15年間はライオンズの歴史では最長だ。

西鉄の“切り込み隊長”として活躍した高倉も「25」を背負った


 指名打者や代打の印象が強い大田の本職は外野手。西鉄の「25」は初代の八浪知行から外野手で、ライオンズでは初代となる永利勇吉は本職こそ捕手だが、西日本では正右翼手として21本塁打、西鉄でも53年に正右翼手として活躍した。翌54年に永利が「10」となり、「25」を継承したのが「31」だった2年目の高倉照幸だ。正中堅手として西鉄の初優勝に貢献すると、56年からは“斬り込み隊長”として西鉄を黄金時代へと引っ張っていく。高倉は66年オフに巨人へ移籍するまで13年間「25」を背負って、西鉄では最長となる。続いて外野のバックアップとして機能した5年目の下須崎詔一が継承。その引退で後継者となったのが大田だ。

西武の最長10年も外野手だが


西武黄金時代には左の好打者、安部が「25」を着けた


 大田の引退で後継者となったのが7年目の安部理だ。本職は内野手だったが、同じ一塁手として清原和博が入団したことで外野に転じて、「25」1年目からプロ初本塁打を満塁弾で飾り、2年目の88年もシーズン1号で満塁本塁打を放つなど、大田に負けず記憶に残る外野手に成長した。安部は近鉄へ移籍するまで10年間「25」を背負い、西武では最長だ。

 そこから系譜は安定感を欠く。外野手の青木和義を経て2001年に新人で右腕の大沼幸二が継承するも1年で「15」となり、巨人から来た右腕の内薗直樹が後継者となるも3年で引退。05年に中日から来た右腕の正津英志が「25」となりセットアッパーとして機能したが5年で引退する。10年には右のセットアッパーで4年目の岩崎哲也が継承したが徐々に失速。その引退で12年に捕手の星孝典が後継者となるも、やはり5年で引退した。

 17年から「25」を背負うのが現役の平井克典だ。やはりセットアッパーとして1年目から即戦力となった右腕は、3年目の19年には81試合に登板して、「24」で永久欠番となっている稲尾和久が西鉄で61年にマークしたパ・リーグ記録を更新した。永久欠番に続く「25」は、平井の背中で過渡期を迎えている。

【西武】主な背番号25の選手
高倉照幸(1954〜66)
大田卓司(1972〜86)
安部理(1987〜96)
正津英志(2005〜09)
平井克典(2017〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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