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背番号物語

【背番号物語】オリックス「#19」金子千尋から山岡泰輔へ。戦後1リーグ時代の阪急には19歳のノーヒッターも

 

巨人キラーの“忍者”


歴代最長の14年間「19」を背負った金子


 2019年に13勝4敗と大きく勝ち越し、勝率.765で最高勝率に輝いた山岡泰輔が翌20年から現在に至るまで背負っているオリックスの「19」。まだ「13」から変更して2年目ということもあり、その前任者、現在は日本ハムの「19」でプレーしている金子弌大(千尋)の印象が残るファンも少なくないはずだ。ドラフト自由枠で05年に入団した金子は、オリックスがバファローズとなって指名の第1号となった選手でもある。翌06年に一軍デビューを果たした金子は、08年からの4年連続を含む7度の2ケタ勝利、14年には16勝、防御率1.98で最多勝、最優秀防御率の投手2冠、沢村賞、MVPに輝く活躍もあった。低迷するオリックスを長く支え続けたエース右腕だったが、18年オフに日本ハムへ。翌19年は欠番だったが、その翌20年に山岡に継承された。山岡は「19」の1年目こそ精彩を欠いたものの、「19」はオリックス・バファローズのエースナンバーといえるだろう。

 この21年の交流戦を制したばかりのオリックスだが、いかに交流戦とはいえ1チームとの試合の数は限られるから、なかなかセ・リーグの特定チームに強い投手というのは登場しにくいもの。オリックスの前身で、プロ野球が始まった1936年から参加している阪急には、1リーグ時代に現在はセ・リーグの巨人に強い“巨人キラー”がいた。戦時中の42年に阪急へ入団して「22」を着け、戦後、プロ野球が再開されると「19」の4代目となった天保義夫だ。帽子が吹き飛ぶほどの豪快なフォームからの快速球を武器に、2年目の43年に19歳でノーヒットノーランを達成、11勝を挙げた天保だが、44年に勤労奉仕の工場で右手の中指と薬指、左手の人差し指と中指の先端を痛めるアクシデント。これで速球は鈍ったが、そこからナックルを習得、3ボール0ストライクから人を食ったようなスローボールを投じるなど老獪な投球術もあって“忍者投手”の異名を取った。

戦後、46年から「19」を背負った天保


 飛ぶボールの採用もあって全体的に本塁打が急増した49年にはリーグ最多の52試合に投げまくって自己最多の24勝、優勝した巨人からは7勝を挙げている。コーチ兼任となった56年には「70」に変更したが、1年で「19」に戻して引退、指導者に専念してからも1年だけ「19」を背負い続けた。その後は指導者としても阪急ひと筋で86年まで務め上げ、青年コーチ時代は熱血指導で鳴らしたが、年齢を重ねるごとに人情派となり、二軍の指導者だったときには下積みで苦労した選手が一軍で活躍すると涙を流して祝福したエピソードも残る。

オリックス連覇を呼んだ助っ人も


96年途中に来日し「19」を着けて連覇に貢献したフレーザー


 1年の欠番を経て60年に後継者となったのは天保と同じ右腕の秋本祐作。56年に入団したときは「56」だったが、58年に13連勝を含む14勝4敗でリーグトップの勝率.778をマークしたことで栄光のナンバーを継承することに。「19」ではリリーフがメーンとなり、初優勝へと突き進んでいくチームを支えた。

 移籍するたびに登録名を変更したことでも知られる助っ人のアグリーを挟んで後継者となった三輪田勝利はドラフト1位で70年に入団した右腕で、選手としては結果を残せず4年で引退したものの、その後はスカウトとしてイチローを発掘するなど手腕を発揮している。75年に広島から復帰した右腕の大石弥太郎からは移籍してきた選手が続いたが、87年に後継者となったのはドラフト1位で入団した左腕の高木晃次。チームがオリックスとなって3年目の90年には42試合に登板して頭角を現したものの、93年オフにダイエー(現在のソフトバンク)へ移籍、リリーバーとしてヤクルトロッテと渡り歩いて、現役生活23年、41歳まで投げ続けた。

 高木の移籍で1年の欠番を挟んで捕手の高嶋徹が95年に継承するも、1年で近鉄へ。翌96年シーズン途中に来日して10勝、リーグ連覇に貢献した助っ人で右腕のフレーザーが98年まで背負うと、その後は右腕の木村昌広、左腕の小川裕介が3年ずつでリレー。その後継者となったのが、天保のコーチ時代を含む12年間を上回り、歴代の最長となる14年間「19」だった金子だ。これを継承した山岡は、さらなる飛躍で最長を更新できるか。

【オリックス】主な背番号19の選手
天保義夫(1946〜55、57〜58)
秋本祐作(1960〜68)
高木晃次(1987〜93)
金子千尋(2005〜18)
山岡泰輔(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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