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西武・平良海馬投手はなぜ、無失点投球を続けられる?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.西武の4年目右腕の平良海馬選手と、広島の新人・栗林良吏選手が6月10日時点で開幕からいまだ無失点投球を続けています。どちらもいわゆる勝利の方程式を任される平良選手はセットアッパー、栗林選手はクローザーで、重要局面を任される投手ですが、なぜ彼らはこのようなパフォーマンスを続けられるのでしょうか。投手としての特徴と併せて教えてください。(東京都・20歳)



A.剛腕の平良選手は変化球でもストライクがしっかり取れる。栗林選手はストレートとフォークのコンビネーションが抜群

 まず西武の平良海馬選手ですが、今季のストレートの最速が158キロ、アベレージで153.2キロを誇る剛腕です。そのストレートは速いだけではありません。身長こそ173センチですが、100キロの体重をしっかりとボールに乗せ、強さ(球威、重さ)も抜群です。こう説明すると、速いだけのピッチャーに思われてしまうかもしれませんが、平良選手の良いところはコントロールも良く、変化球でもしっかりとストライクが取れるところにあります。

 持ち球はスライダー、カットボール、チェンジアップ(※投球割合の多い順。ほとんど差はありません)。データ上ではストレートが全体の投球の4割だとしたら、残り6割が変化球ですから、よほど、変化球にも自信があるのでしょう。ゆるいチェンジアップをポンと投げてカウントを整えたりもします。あの豪球とのギャップが見ている側にはありますが、バッターからするとたまりません。速いボールをケアしなければいけませんし、それを察知すれば変化球を決め球にもする。そもそも真っすぐのレベルが高いので、ショートイニングでどうこうできるピッチャーではありません。

 一方の広島のルーキー・栗林良吏選手も平良選手のストレートとは異なるものの、今季最速153キロ、アベレージ148.9キロはキレがあります。こちらはこのストレートと、決め球のフォークでしょう。追い込んだ後は4割がストレート、6割がフォークですが、どちらのボールも一級品です。社会人のトヨタ時代は先発もしていましたので、カーブ、カットボールも持ち球にありますが、基本は1イニング限定のクローザーですから、ストレートとフォークで勝負しますが、これでも十分です。ストレートと同じ軌道から140キロに近いスピードで落ちるスプリットで、コントロールもいい。こちらも短いイニングではなかなか攻略の難しいピッチャーだと思います。

 事実、平良選手は10日時点で開幕から31試合連続無失点でプロ野球記録タイ(その後、17日現在33試合まで伸びる)。栗林選手も開幕から22試合連続無失点で球団記録を更新中です(その後、記録はストップ)。平良選手は西武の叩き上げで昨年結果を残し(新人王)、マウンドでの自信を感じます。一方の栗林選手は大卒、社会人出身で、こちらはキャリアが十分。どちらもマウンド度胸が良く、後ろのポジションが合っています。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2021年6月28日号(6月16日発売)より

写真=BBM
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