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新しい宝刀を身につけた巨人・ビエイラは制球難克服で「不動の守護神」になれるか

 

16試合連続無失点のピッチング



 見違えるような成長ぶりで大化けの時を迎えている守護神がいる。巨人のチアゴ・ビエイラだ。

 5月3日の広島戦(マツダ広島)以降、16試合連続無失点。デラロサが今月1日に登録抹消されて以降は守護神を務めている。ビエイラの魅力は剛速球だ。昨年のソフトバンクとの日本シリーズでは自身最速の164キロを計測。「限界はないと思っています。スピードも、もっともっと出ると思う」と日本ハム時代の大谷翔平(現エンゼルス)が記録したNPB最速165キロ超えにも自信を見せていた。

 昨年は後半戦から一軍に定着し、27試合登板で0勝1敗2ホールド、防御率3.28。直球はとにかく速い。一方で明確な課題があった。変化球でストライクが入らない。四球で走者をためて、不利なカウントから苦し紛れの直球で痛打を浴びるケースがたびたび見られた。来日2年目で開幕一軍を迎えた今季も春先から悪癖が顔をのぞかせて不安定だった。4月24日の広島戦(東京ドーム)から3試合連続複数失点。防御率6.92まで悪化し、5月4日にファームに降格した。

 だが、同月18日に再昇格すると、大きな武器を身につけていた。今年から習得に励んでいた縦に落ちるスライダーだった。ファームで再調整した期間に磨いたのだろう。制球力が格段に良くなった。

 他球団の首脳陣はビエイラについて、「攻略が一気に難しくなった」と渋い表情を浮かべる。

「スライダーがばらついていたけど、一軍に戻ってきたときにきっちり制球できるようになっていた。ビエイラの直球は160キロを超えるけど速いだけではない。ツーシームのような独特の軌道なんだよ。変化球でストライクが取れなかったから、ストライクゾーンに絞って速い球を狙い打ちできたけど、140キロを超えるスライダーでストライクが取れるとなると状況がまったく変わってくる。あの縦に落ちる軌道のスライダーはなかなか打てないし、スライダーを頭に入れなきゃいけないから直球がさらに生きてくる。厄介ですよ」

 今月20日の阪神戦(甲子園)では新たな宝刀が冴え渡った。1点リードの9回一死二塁で代打・糸井嘉男を内角に鋭く落ちる141キロのスライダーで見逃し三振、続く近本光司も縦に大きく落ちる144キロのキレ味鋭いスライダーで空振り三振に抑えた。

球団OBのマシソンのように……


巨人・マシソン


 ブラジル出身のビエイラは真面目で練習熱心であることも知られる。三振やアウトを取るたびに雄叫びを上げるスタイルで勝利への執念を全面に出す。日本で成功したい思いは誰よりも強い。

 身近にお手本がいる。球団OBのスコット・マシソンだ。制球難が課題だったが、野球に取り組む熱心な姿勢で投げ急ぐ姿勢とフォークの握りを変えたことで克服し、チームに不可欠なセットアッパーに。来日2年目の2013年に2勝2敗40ホールド、防御率1.03で同僚の山口鉄也とともに外国人史上セ・リーグ初の最優秀中継ぎ投手を獲得。14年以降も64、63、70、59試合登板と鉄腕ぶりを発揮し、16年は8勝4敗1セーブ41ホールド、防御率2.36で外国人投手初の2度目の最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。

「直球はいくら球速が出ても、甘く入ればとらえられてしまうものです。何よりも大事なのはコントロール」と語っていた信念に、日本野球で成功した秘訣が凝縮されている。NPB通算8年間で421試合登板、27勝29敗54セーブ174ホールド、防御率2.46。外国人では異例の投手キャプテンを務めるなど、ほかの選手の人望が厚く、球団史上に残る優良助っ人として活躍した。

 剛速球を武器に日本で成功したいという真面目な性格はビエイラにも共通している。「第2のマシソン」になれるか。その可能性は十分に秘めている。

写真=BBM
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