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背番号物語

【背番号物語】駒田徳広「#50&#10」2チームで通算2000安打もデビューのナンバーのほうにインパクト?

 

変更に難色を示すも


若手時代、背番号「50」を着けていた駒田


 巨人と横浜(現在のDeNA)で「10」を背負い、通算2000安打にも到達した駒田徳広。巨人の「10」をさかのぼると通算3085安打でプロ野球の頂点に立つ張本勲がいる。その張本を紹介した際に駒田にも触れたが、駒田も同じく「10」でチームを渡り歩いた左打者だ。ただ、駒田の背番号といえば、この「10」よりも最初の「50」を印象に残しているファンも少なくないのではないだろうか。

【駒田徳広】背番号の変遷
#50巨人(1981〜87)
#10巨人(1988〜93)
#10横浜(1994〜2000)

 通算13発の満塁弾を放ち“満塁男”の異名を取った駒田だが、桜井商高3年の夏、県大会の決勝に投手として出場、打者としては満塁の場面で敬遠され、投手として満塁からの押し出しの末に満塁弾を許し、さらにふたたび打者として満塁弾を放つなど、プロ入り前から満塁の場面と縁が深い男だった。1981年に巨人へ入団したときも投手で、すぐ野手に転向。2年目までは二軍で過ごしたが、迎えた83年に一軍で初めて打席に立つと、いきなり満塁弾を放つ。初打席満塁本塁打はプロ野球で初めてとなる快挙で、これ以上ない鮮烈デビュー。このとき背負っていたナンバーこそ「50」だった。

 このインパクトだけではない。このとき同じ50番台にいたのが「54」で右腕の槙原寛己と「55」で同じ左打者の吉村禎章だ。「55」を吉村が「補欠の番号」と言っていたことも巨人の「55」を紹介したときに触れているが、こうした大きな背番号の選手がそろって活躍することは当時は珍しく、3人は“50番トリオ”と呼ばれて売り出された。3人とも「50」だったわけではないから正確には“50番台トリオ”なのだが、語感では”50番トリオ”に軍配が上がるのも確か。“50番”は駒田1人であり、もっとも若い背番号の駒田がトリオの筆頭に挙がることも多かった。こうしたことの積み重ねによる刷り込みで、ファンの中で駒田と「50」が一体化していったという面も多分にある気がする。

 一方、巨人ファンにとって“五十番”といえば通算868本塁打を残した王貞治の実家を思い出すファンもいるだろう。だからというわけではないだろうが、王と同じサウスポーで、投手から一塁手に転向したのも同じ。こうした要素に加え、プロ初打席の印象もあって“王貞治2世”のような期待を受けたのが駒田だった。王の“一本足打法”に挑戦したこともあったが、もともとは中距離ヒッターでアベレージ型だったため、これで低迷。悩んだ末、我流に徹することにした駒田は、コンパクトなスイングに戻して打撃が安定するようになり、影を潜めていたパワーも復活した。87年に初めて出場100試合を突破すると、オフに「10」へと変更。ただ、駒田は当初、これに難色を示している。

満塁弾10発は「10」で


88年から背番号は「10」に変更された


 駒田いわく「当時、10番は移籍の選手や外国人の選手が着けて、毎年のように変わっていた。だから着けたら長持ちしない」と思っていたのだという。駒田は「10」で89年の近鉄との日本シリーズでMVPに輝き、翌90年からは3年連続で全試合に出場したが、93年オフにFAで横浜へ。巨人の「10」は5年で終わり、これが長いか短いかは意見が割れそうだが、横浜で背負ったのも「10」だった。

 横浜でも移籍1年目から5年連続で全試合に出場。前身の大洋から長く優勝とは無縁だった横浜では優勝を知る貴重な存在でもあり、98年には“マシンガン打線”の五番打者としてリーグ優勝、日本一に貢献した。シーズン9本塁打のうち2本が満塁弾と“満塁男”ぶりも健在。翌99年には背番号と同じ10度目のゴールデン・グラブに。横浜では駒田から「10」に左打者の系譜が始まり、2000年オフに駒田が引退すると、“マシンガン打線”で続く六番を打った佐伯貴弘が継承している。

 ちなみに、駒田が規定打席に到達したのは「10」時代だけで、通算10度のゴールデン・グラブも「10」時代のみ。満塁弾も背番号と同じ10本を「10」で放っている。それでも、デビューのインパクトから「50」を推すファンも多そうだ。駒田は佐伯のように最初の背番号で引退したわけではなく、最後まで「10」を背負い続けたが、通算2000安打を残した選手で、デビュー当時の背番号と全盛期の背番号、双方でファンの脳裏に刻まれている駒田は異色の存在といえそうだ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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