3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 2階から投げおろすような真っすぐ
今回は『1973年3月26日号』。定価は120円。
3月9日、延岡キャンプを打ち上げた近鉄・岩本監督は「仲根は想像以上にいいボールを投げている。これなら公式戦でも十分に通用すると思う。あとはオープン戦で場数を踏ませ、自信をつけさせたい」と話した。
近鉄のドライチ新人、ジャンボ仲根、
仲根正広である。
2月23日にはフリー打撃に登板。先頭は
土井正博だったが、初球でバットを折った。すぐさま土井は打席を飛び出し、「近すぎる。30センチは前だぜ」と抗議し、ホームベースを後ろに下げたが、それでも以下20球ほどは、ほぼケージから打球が出なかった。
「とにかく打ちにくい。球が重いし、ボールが全然飛ばないんだ。きょうは俺の完全にKO負けだ」と土井も感心する。
次に打席に入った
永淵洋三も、やはりバットを折られ、「まるで2階から投げられているようだった。ボールはちょっとシュート回転しているし、手元でぐっと伸びる」とこちらも大称賛。
もともとは背番号20にかけ、二刀流で「20勝と20ホーマー」が仲根の夢だった。しかし、キャンプ中、他のバッターを見て力の差を実感し、自ら「投手一本で」と言ってきた。
問題は右ヒジの持病だった。登板時の観客動員が期待だけるだけに、球団サイドは前のめりで、現場に早期デビューを要求していた。
果たしてどうなるか。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM