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背番号物語

【背番号物語】秋山幸二「#1」“チームの顔”が後継者に。西武、ダイエーで受け継がれた黄金の系譜

 

1年目は「71」、2年目からは「24」


西武で87年から93年まで背番号「1」を背負った秋山


 一般的に“チームの顔”といえる選手のナンバーとされる「1」。1980年代から90年代にかけて黄金時代を謳歌した西武、そして90年代の終盤から黄金時代へと突入していったダイエー(現在のソフトバンク)で「1」を背負った秋山幸二も、そんな選手の筆頭格といわれるだろう。

 一方、プロ野球で「1」が永久欠番となったことは2度あり、第1号は近鉄の鈴木啓示だったが、近鉄の消滅とともに“失効”したことは近鉄の「1」を紹介したものに詳しい。現時点では巨人王貞治が背負った「1」のみだ。王と秋山、両者はダイエーの監督と選手としてチームを黄金期へと導いていくが、背番号の物語でも独特の双曲線を描いている。ただ、秋山は王と違って、プロ1年目から「1」を背負ったわけではなかった。

【秋山幸二】背番号の変遷
#71(西武1981)
#24(西武1982〜86)
#1(西武1987〜93)
#1(ダイエー1994〜2002)

 ドラフト外で81年に西武へ入団した秋山は、1年目だけは「71」で、これで3試合に出場しているが、一般的なドラフト外の選手と異なり、契約金5000万円とドラフト1位の選手と変わらない待遇だった。これは根本陸夫監督が大学への進学を希望していた秋山を「西武のクリーンアップを打たせる選手に」と期待していたためだ。秋山は2年目の82年には背番号も「24」へと変更。21世紀に永久欠番となるナンバーで、これについても西武の「24」を紹介したときに詳述しているが、このときの「24」には、こうした機運は皆無だった。

背番号「24」で86年には41本塁打を放った


 秋山は以降2年間、一軍出場なし。ただ、これも芽が出なかったわけではなく、この2年で3度もアメリカ教育リーグへ留学するなど、英才教育を施されている。84年には一軍の実戦で経験を積むと、翌85年には全試合に出場して、いきなり40本塁打を放つブレーク。その翌86年も41本塁打を放ったが、この86年に「3」でプロ1年目から活躍したのが清原和博だ。西武はリーグ連覇を果たし、3年ぶりに日本一の座にも返り咲く。そして迎えた87年、プロ7年目の秋山は、入団した81年を最後に欠番が続いていた「1」を背負うことになる。

王の後継者


 すでに強力チームとなっていた西武だが、近い将来、巨人と“盟主”の座を争うほどの黄金期を迎えることは、まだ誰も知らない。球団が秋山に「1」を与えたのは、かつて王が着けた背番号だったからだという。空前絶後の黄金時代といえる巨人のV9。このとき、もっとも輝いたナンバーこそが、王の「1」と長嶋茂雄の「3」だった。この“ON砲”の再来を託されたのが秋山と清原だ。秋山は「1」1年目から43本塁打で本塁打王に輝き、西武は現役時代の「1」のまま指揮を執る王監督が率いる巨人を日本シリーズで撃破。三番の秋山、四番の清原は“AK砲”と呼ばれ、一世を風靡していく。

移籍したダイエーでも背番号「1」を着けた


 秋山が根本監督の率いるダイエーへ移籍したのが94年で、新天地でも引き続いて「1」を背負った。そのオフに根本監督が退任すると、新たに就任したのが王監督だ。チームが南海だった時代から長く低迷を続けていたダイエーで、秋山はタイトルからは遠ざかったものの、主将としてチームを支えていくことになる。

 ダイエーとなって初のリーグ優勝を果たしたのは99年。秋山は移籍6年目、王監督は就任5年目のことだ。ダイエーは日本シリーズで中日を破って初の日本一にも輝き、その勢いのままリーグ連覇。日本シリーズでは長嶋監督の率いる巨人に敗れたものの、ダイエーは黄金時代に突入、チームがソフトバンクとなってからも圧倒的な強さを維持していく。秋山は2002年オフに現役を引退。王監督が勇退したのが08年オフのことで、その後を受けて監督に就任したのが秋山だった。秋山は11年には全チームに勝ち越しての“完全優勝”を達成するなど、指揮官としても手腕を発揮。14年にもチームをリーグ優勝、日本一へと導いて、オフに監督の座を現在の工藤公康に譲っている。

 ちなみに、タイロンら助っ人の系譜だった西武の「1」、桜井輝秀ら職人肌が多かったダイエーの「1」は、秋山から印象が一変。“チームの顔”となる選手が後継者となり、ソフトバンクでは内川聖一の移籍で21年は欠番だが、この流れは今後も続くことになりそうだ。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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